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ペンからの考察

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クリスマス前の慌ただしい事件と年末年始のイベントとその直後に実行した事件の後処理を終え、さあ残りの冬休みをゆっくり過ごそうか。そう思っていたのに、気付いたら終わりかけていた。
 そんなことに軽い絶望感を覚えながら俺はその日、とある店の文具コーナーにいた。
 新学期が始まるにあたり、なくなりかけていた文具の補充のため、という理由は家の手伝いや妹の相手を逃れて家を出るための建前に過ぎず、文具雑貨売場を併設する本屋はそんな建前を実行するにも時間つぶしをするにも最適な場所であった。レンタルビデオコーナーもあることだし後でそこも見ていこう。
 とりあえずは建前を嘘にしないためにも、補充すべき文具を先に買っておこう。正直シャープ芯なんて別にいつでもいいんだがな。
 いつも使っているのと全く同じ奴を手に取り、レジへと向かう。と、その前に他に必要なものがないか少し文具コーナーを回ろうと考えた。他は特になかったように思うが、見て回っていたら何か見つけるかもしれない。どうせ暇だしな。
 多種多様なシャープペンやボールペンが並ぶコーナーはカラフルすぎて、中身が黒一色であってもそうなんだから、カラー毎の種類はさらに膨大だ。こんなになくてもいいだろうと思うがニーズがあるからこんなにも多様なんだろう。俺は書ければなんでもいいと思うが。
 ボールペンが切れていた覚えもシャープペンが壊れていた覚えもないのでここはすぐにスルー。
 コーナーを抜けたところで目に入ったのは文房具と結びつかないガラスケース。鍵の付けられたそこに美術品よろしく並べられていたのはやはり紛うかたなき文房具でついでに言えばボールペンだった。
 万年筆などは確かに高級品のイメージがあるが、こういう機能的なデザインの分かりやすくボールペンなものがガラスケースに入っているのは何やら不釣り合いなようにも感じた。
 ケースの横にそのボールペンの説明が書いてある。なるほど、シャープペンとボールペンの両方が使え、ボールペンは三色好きな色を選んで自分の使いやすいペンにできるというわけか。確かに便利かもしれん。
「ん・・・?なんかコレ、見たことある、ような・・・?」
 だが、こんなガラスケースに入ってるような高級ペンを俺が持っているわけないし、周りで持ってそうな奴もいない。見たことなどないだろうと思うのだが、どこかで見た気がする。またデジャヴュとかいうやつか?もうさすがに勘弁してくれ。
 だがやはり、このペン、特に暗めのシルバーみたいなカラーのものを俺はどこかで見た気がする。
 俺の知り合いにこんな普通より高そうなペンを使うような奴はいない。持っててもおかしくなさそうな人物に一人だけ心当たりがあるが持っているのを見たことがない・・・はず、なのだが、なぜかそいつとこのボールペンが繋がった。
 いや、持ってたか?いやいや、やはり持ってるところなど見たことが・・・
「おや、お買い物ですか?」
「うおわぁっ!!!」
 じっくり考え込んでいたせいで、突然後ろからかけられた声に過剰に驚愕し、飛び上がってしまった。しかもちょうど考えていた人物、当の本人からかけられた声だからな。余計に、ってもんだ。
「古泉、お前なぁ・・・」
「すみません、まさかそんなに驚かれるとは思いませんで」
 こちらも驚いた風で謝罪をしてくる古泉は、俺と同じ用事なのかノートを1冊手に持っていた。古泉の場合は暇つぶしが本題でなく、まさしく買い物が主なのだろうが。
「いきなり声をかけるな」
「すみません、なにやら真剣そうに見ていたので声でもかけないと気付いていただけないかと」
「そうかよ・・・そうだ古泉」
「はい?」
 先程の疑問。晴らすにはちょうどいいじゃないか本人に聞けばいい。
「お前ってこのボールペン持ってたか?」
「え、これですか?こちらの?」
 ガラスケースの中の問題のボールペンを指さして訊ねれば、古泉は軽く驚いたように同じボールペンを指さし訊ね返してきた。そうだよそのなんちゃらプレミアムとかいうのだよ。なんだよその苦笑い。
「いえ、確かに多少の憧れはありますし、手にできるものならしたいとも思いますが、高校生には少々・・・いえかなり分不相応だと・・・」
「そこまでか?なんかお前なら持ってそうだと思ったんだが」
「まさか。値段をごらんになられましたか?」
 値段?確かにガラスケースなんぞに入っていかにも高そうだが結局は文房具だろ。千円とかそこら・・・
「んんっ!?」
「位をお間違えないよう。ね?高校生が気軽に持てるものではないでしょう?」
 待て待て待て!文房具だぞ!?ボールペンだぞ!?シャーペンも付いてるようだが、ボールペンのカラー3色選べるみたいだが、結局はペンだぞ!?それが、いちじゅうひゃくせんまん・・・
「ありえねー・・・こんなん買う奴いるのか?」
「少なくとも学生の内では無理でしょうね。祝い事で身内からのプレゼント、などはありそうですが僕はそういうのはありませんでしたし。おわかりいただけましたか?」
「ああ、わかった。すまん勘違いだったようだ」
「いいえ構いませんよ。ですが、そうですね。機能的に使い勝手が良さそうなのは勿論ですが、それを感じさせないスマート且つシンプルなデザインのこのペンには憧れますね」
「いや、ペンだぞ?」
「機関の報告書を書いたりノートをまとめていたりするときにこういうペンがあったら便利だろうな、と思うんですよね」
 うっとり。そんな言葉がガラスケースの中を眺める古泉にはぴったり当てはまった。自分でさっきは分不相応と言いながら、それでも憧れていると言って、どっちなんだお前は。
 いや、しかしそれにしても、古泉じゃないなら俺は誰がコレを持っているのを見たのか。古泉とこのペンが一度繋がってしまうと他の心当たりがさっぱりだ。古泉しかいないような・・・
作品名:ペンからの考察 作家名:由浦ヤコ