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【ギアス】あめふりくまさん【ロイミレ】

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この元・婚約者の男は、雨が降るなかタクシーでプリンを買いにきた。行きはよかったものの、店があるのは大通りからわき道にそれた狭い道路沿い。もっというなら住宅街。
そんな所にタクシーなんて滅多に現れるわけが無いのだ。

「あのねえ、運転手さんに言ってちょっと待っててもらえばすむ話なんですよ?」
「ナルホド!頭がイイねえキミは」

……………この人は私をバカにしているのだろうか。



「だからここで雨が止むのをまっていると?」
気を取り直して聞いてみる。

「ビニールの袋に入ってるけどさあ、箱は紙だし。このまま帰ったら研究室に着くころには食べられたもんじゃない」
「まあ、それもそうです、けど………、」



ため息をひとつ。いい加減傘を持つ手がしびれてきた。新しい傘はまだどこか手になじまなくて、妙に重たく感じるものだ。
そんな私をよそに、目の前の爛々とした瞳は面白そうにこちらの様子を伺っている。

「………私達、もう婚約者同志ではないでしょう」
「だからって別に、君の傘に入れてもらえない理由にはならないよねえ?」
「そりゃあ、そうだけど」
「…………」
「…………」
「…………………」



「……傘、持ってくださる?」
諦めたようにそう言ったら、相変わらず素直じゃないねと笑われてしまった。

あったかいミルクティが飲みたいなあと言う肩がすこし冷たくなっていたから、許してあげることにしましょうか。