レイヴンとユーリ(TOV)
「あんまり子どもをいじめんなよ、おっさん。大人げねえな」
「だってリタっちの反応面白いんだもん」
「あのなあ。……で、今の話はどの部分が本当なんだ?」
「うん?」
「コツなんだろ、上手な嘘の。いやあ、なかなか真に迫ってたぜ」
平坦な口調で続けるユーリに、レイヴンは瞬きを繰り返してから苦笑を浮かべた。
この青年はやはり侮れない鋭さを持っている。無意識のうちに真実に近いところを探り当てる、野生の獣のような勘の良さだ。惜しむらくは性根が真っ直ぐで冷徹になりきれないところだろうか。少しは疑うことを覚えればいいのに、とレイヴンは声には出さずに呟いた。
「全部、本当だよ」
「はあ?」
「――なんてね、即興で作った割には出来の良い怪談話でしょ」
「まあ、ありがちだけどな」
「たしかに、動く死体なんて独創性に欠けるか」
皮を剥いたじゃがいもを刻みながらレイヴンは首を傾げた。生ける屍なんて今時子どもだましにもならないだろう。けれど生きることも死ぬこともできない人間の末路をレイヴンはよく知っている。内側から腐り落ちていくのだ。そうして朽ち果てて、後には何も残らない。
「ま、死んだ人間は痛みも何も感じないんだから、そういうのがふらふらしてたら心臓を狙ってやればいいのよ」
「へえ、そんなもんか」
「そんなもんだよ。それさえなくなれば動かなくなるから」
だからちゃんと心臓を狙ってね、と嘘つきは笑った。
作品名:レイヴンとユーリ(TOV) 作家名:カシイ