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すみびすみ
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novelistID. 17622
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KGが上田城で一目惚れを使ったようです

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大きな怪我じゃなくてよかった、そう言ってくるりと背を向け、先ほど押し出されていた方向とは逆の、門へ向かってぶらぶらと歩き出す。
予想外の反応に虚をつかれたらしい幸村は、佐助に支えられたまましばし目をぱちぱちと開いたり閉じたりした。が、慶次が遠ざかっていくのを見ると弾かれたように立った。
「ま、前田殿!」
 後ろ手をひらひらと振る慶次に向かって慌てて声を掛ける。
「い、行かれるのか」
 ぴたりと立ち止まり、首だけをぐるりと回して振り向いた慶次は怪訝な顔をした。
「あんた、そう言ったじゃない」
「いや、…その、そうだが」
 まさかこうもあっさりと言うとおりにしてしまうとは思っていなかったようだ。幸村はあちらを見たりこちらを見たりして、慌てながら言葉を探した。
「ど、どうしたのでござるか」
「なにが?」
「貴殿はもう少し図々しいというかあつかましいというか、鬱陶しいというか、そういうお方だと」
「…。なんだよ、それ」
傍から聞いても失礼極まりない言葉の羅列に慶次は吹き出し、それから首を少し傾けて微笑んだ。
「迷惑だってんなら、もう来ないよ」
「え、そ、その」
「あんたとの喧嘩、楽しかった」
「け、慶次殿」
「それじゃね」
明らかにうろたえた態度に気づいているのかいないのか、言うべきことが見つからずにあたふたしている幸村をまったく無視して慶次は再び城門へ歩き出した。すれ違いざまに佐助にも、そのせつは悪かったね、と言うので軽く手を上げて返し、去ってゆくその姿を見送る。
幸村がなすすべなくじたばたしている間に背中はみるみる小さくなり、やがて見えなくなっていった。
「…」
慶次を引き止めることがかなわなかった幸村は呆然と立ち尽くした。
何があったのかは細かくは分からない。しかし、おおかた慶次の言ったことは先日佐助が幸村に必死に行って聞かせたことと同じ内容だったのだろうと推測することができた。 
そして、それが幸村をひどく落胆させるものであったということも。
「旦那、旦那、大丈夫?」
「…ああ」
何しろこの主が色恋だとか情などといったものに考えを巡らせること自体珍しい、というより、今まで全くそんなことはなかったのだ。誰かに思いを向けられた、しかも相手は男、ということで真剣すぎるほど真剣に悩んだ末、それが勘違いだと佐助に知らされたときの、あの衝撃と気恥ずかしさに震える顔を思い出す。
「佐助」
地の底から響くような声で主が呼んだ。
「佐助の言った通りであった」
「あ、やっぱり」
努めて明るい声で返したが、げっそりとした表情がこちらを見ていたので思わず一歩引く。幸村は目を逸らし、何かを考えるように宙を見つめた。
「俺にはやはり、冗談を楽しむ心というのが足りないのだな」
「いやぁ、俺様この件は風来坊が悪いと思うよ」
「…そうであろうか」
そうだと思う。何となく恥ずかしい台詞を吐いているのはあちらなのだし、それをこの純粋すぎる主が誤解するのは詮無いことだ、佐助はそう思った。誤解はされた側が悪い。
主とどこまでもそぐわない生き方と信念を持ったその男との接触を、佐助は心底面倒くさく感じていた。
「追い出してしまったな」
「…そうねー」
「まさか本当に出て行くとは」
「…」
見ると、主は目を伏せ、少しうなだれていた。やがて瞼が薄く開き、かすかな溜息が漏れるのが聞こえる。悔いているのだろう。そういう主のどこまでも裏表のない思考を、佐助は好ましく思った。
「旦那。ああいうのは、なんだかんだでまた来るから」
「そうなのか」
「そう。旦那が思うほどには気にしてないって、絶対」
 幸村がゆっくりと顔を上げてこちらを見た。真っ直ぐなその両目には再び光が宿り、周りの暗い空気が見る間に晴れていく。
「また甘いもの持って性懲りもなく来るよ。見てなって」
甘いもの、と聞いた途端、幸村の目は一瞬の輝きを得て、そうしてすっと、笑みが浮かんだ。
「…そうか」
空高く鳶が鳴いた。
 …まったく。
本当に面倒なことだと、心から思った。