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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記6

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「・・・その時は自分がやってることが間違いだとは思わなかったんだよ。まぁ諏訪子が止めようとしてたってのは今初めて聞いたけど。あたしはその時はもうとっくに諏訪子に見放されたと思ってたし。で、あたしは疲労困憊し、存在力も減っていく中で力の供給を続けていたわけだけど、ある時あたしのところに各地方の大聖霊の代表だと名乗る精霊があたしの所に来て、謁見を申し出てきたんだ。もちろん断る理由はないし、地方の現状も知りたかったから、その子たちに会ったよ。 そしたら、顔を合わせた開口一番、やっぱりって言われたんだ。その子たちはあたしが厳しい状況だったことを予想していたんだよ。あたしは努めて平静を装って大聖霊たちを歓迎しようとしたんだけど、その子たちの一人、一番前にいた子があたしを制しながら、自分たちへの力の供給はもういらないと言い出したんだ。それで、あたしに言い返す暇を与えず。大聖霊たちの今の気持ちをあたしに訴え始めたんだ」
神奈子がそこまで話すと一行が進んでいた道なき道が突然開け、その十数メートルくらい先に聳え【そび】え立つ絶壁が広がっていた。
「おぉ、もう着いちゃったか。じゃあこの話はいったん中断だね」
よくみると、絶壁の所に人が立っているのが見える。
「ん?なんか御出迎えがいるみたいだよ。さすが御影だね。僕たちが来るのを予測してたんだね」
そう言って諏訪子は青蛙神にしたのと同じように御出迎えであろう人物に向かって手を振った。それほど距離は離れていなかったので、むこうもこちらに気が付き、手を振り返しながら近づいてきた。
「神奈子様・・・」
神奈子の話を神妙に聞いていた青蛙神は真剣な表情で神奈子に言った。
「先ほどの話の続きをお聞かせ願いたいのですが」
「私も聞きたいです」
早苗も真剣な面持ちだ。無理もない。神奈子の話の一番のクライマックスの手前で中断されたのだから。
「いや、だからもう目的地に着いたんだって。続きは後でちゃんと話すから、先に用事を済ますよ。といっても、この後博麗の巫女の所にも行くから、話すのは夕飯の後になっちゃうだろうけど」
今がちょうど午後4時を過ぎたあたり。天魔との話で約30分くらい、博麗神社までの移動は空を飛んで行くから換算に入れず、博麗神社で場合によっては1時間以上、常に誰か(特に人間以外)が入り浸っているので、いる奴によっては2時間コースになる可能性もある。守屋ファミリーの夕食は大体7時からなので、早苗は遅くても6時30分には夕食の支度を始める。なので、2時間コースになった場合はそれだけ夕食の時間が後ろにずれ込むことになる。そして諏訪子がお腹すいたと騒ぎ出す。
「博麗の巫女?」
話し合いで決めた訪問先五か所とは違う名前が出てきて、青蛙神はオウム返しに聞き返した。
「博麗の巫女っていうのは、代々この幻想郷を管理、監視している巫女の一族のことだよ。あたしも詳しくは知らないけど。とにかく、幻想郷の外から来た奴が、一番初めに挨拶に行かなきゃいけない相手なんだ。さもなければ、向こうからやって来て、粛清されちゃうんだよ」
あたしらみたいにね、と思い出し笑いのようにクスクスと笑って神奈子は説明した。
(神奈子様や諏訪子殿を粛清?)
また自分が考えうる次元外の話である。
「ちなみに、その一族はれっきとした普通の人間だよ」
青蛙神が驚くのが解っていて面白がって言っているのだから、本当に良い性格をしている。
(人間!?)
案の定の驚きよう(笑)。やはり解りやすい。
(確かに、顕界にも神官や陰陽師、法力僧など妖怪や悪霊を滅することができる人間はいた。しかし神となると話は全然違ってくる。神に粛清をくわえる人間だと!?)
神奈子たちも幻想郷では常識に囚われてはいけないって、ちゃんと青蛙神に言ってあげればいいのに。
「ともかく話の続きは今日の一番最後だと思っといておくれ。・・・う~ん・・・どうもあたしは話が長くなっていけない」
それはこの間にもお出迎えの人と話しこんでいる諏訪子も同じことが言える。顕界では信仰者や祝部たちとおいそれと話すことができなかった。神奈子は大衆を導く神であったから。まともに話ができるのは諏訪子しかいなかった。もちろん諏訪子にも同じことが言えるが。二人の深層心理(神様に対して深層心理というのもおかしな話だが)には誰かとの会話に飢えている心があるのだろう。
「わかりました。それならばその時に」
自分のために動いてくれている神奈子にあまり我儘も言えないので、青蛙神は大人しく引き下がった。
しかし・・・早苗が食いつくならまだしも、なぜ神奈子と今日初めて会った青蛙神がこんなに神奈子の過去話にこだわっているのだろうか。なにか、思うところがあるのか?