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めかくしセカイ

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 最近になって、以前よりも格段と例の夢を見る頻度が上がってきた。初めのうちは気のせいだと思っていたが、前までは週に一度見るか見ないかだったというのに、ここ最近では2日に一度までになっている。しかも回を重ねるにつれ、夢の内容がより詳細に、より鮮明になってきているのだ。今日の夢にしても、あそこまで会話内容や仕草がはっきりと解るなんて、今までにはほとんどなかった事だった。
 なぜ夢の頻度が上がったのか、その理由は解らない。だが、何を切掛けにこうなったのかは解る。考えるまでもなく、利吉の存在だ。夢の頻度が上がったのがいつからかを考えれば、すぐに出る結論だった。
「たまったものじゃないなぁ」
 夢の事を気にしないでいよう、これ以上利吉を詮索しないようにしよう。そう思った矢先にこれである。もしこの夢を自分に見せている人物がいるとしたら、相当に性格が悪いに違いない。半助は苛立たしげに頭を掻いた。
 利吉と会うことをやめれば、夢の頻度も昔に戻るのかもしれない。だが、今の半助にとり、すでに利吉は『夢のキーを握る人物』ではなく『年の離れた友人』となっている。会わないという選択肢はできる限りとりたくはなかった。
 それから数日間も、半助はあの夢を見続けた。内容は様々で、利吉が出てくる時もあれば、忍術学園で授業をしている時もあり、時には生徒や同僚と協力して敵対する忍者と戦っている時もあった。今まではぼやけていた夢も段々と輪郭を取り始め、もはや時系列すら整理できそうなほどである。パラレルワールドが存在して、そこにいる自分の行動を夢でみているのではないかとすら思うほど、夢は日々鮮明になり続けていった。夢日記は惰性で付けているものの、前を見返すことは、何やら恐ろしさを感じて出来なかった。
 そうこうしているうちに瞬く間に平日は過ぎ去り、土曜になった。普段ならば喫茶店へ行く曜日である。
「……どうするかなぁ」
 半助はカレンダーを眺めながら悩んだ。利吉と会って話したいとは思うが、ここ最近の寝不足は深刻で、今日は体調を整えるためにも家でゆっくり寝ていたいとも思う。うーんと悩みに唸りながら、ふと半助は小さく苦笑を零した。夢の中で自分が『忍者の三病』とやらについて話していたことを思い出したのだ。そのうちの一つが、確か迷いだったように思うが、今の自分はまさに三病にかかっている状態ということなのだろう。教師失格だなぁなどと冗談交じりに考えながらも、長々と悩んだ挙句、今日は行かない事に決めた。いま顔を出しても、こんな隈もできて草臥れた様子の自分では心配させてしまうだけに違いない。そんな風に理屈をつけながらも、自分が逃げているというのは嫌というほどに理解できたが、半助は意図的にそれを無視した。
「いい加減に要らないものの整理もしないといけないし、たまにはお前と二人でのんびり過ごすのも悪くないよな」
 自分を誤魔化す意味も込めて、先週末に実家から帰ってきた、布団の中で丸くなって寝ている猫のきり丸へと、ことさらに明るい調子で語りかける。自分の名が呼ばれた事が解ったのか、瞑っていた目を開いて半助をじっと見つめ、それから小さくにゃあと鳴いた。

作品名:めかくしセカイ 作家名:和泉せん