めかくしセカイ
息を詰まらせながら、あの夢で見たような激しいキスを交わす。気持ちよさで目眩がする。暫くは互いに飽きもせずキスばかりしていたが、不意に利吉が離れ、それからぐいと体を押された。突然の事に抵抗もできず、背中が床につく。完全に押し倒された体勢になった。
「……いいですか?」
半助が着ていたスーツをはだけさせながら、利吉が尋ねてくる。半助は仕方ないといわんばかりの笑みを浮かべると、軽く頷いた。
「駄目だ、といっても続けるだろう?」
「本当に貴方が嫌だというならやめますよ」
「まあ、今日はしょうがない。ただ、次からは君の家でお願いしたいな。うちは壁があまり厚くないんだ」
「解りました。部屋を片付けておきますね。……土井先生」
「ん?」
改まった表情になった利吉を見上げ、首を傾げる。利吉は土井に触れるだけのキスをすると、こつんと額を合わせた。
「今度こそ、絶対に約束を守ります。だから、私と一緒に生きてください」
低く囁くような小さな声だというのに、半助の耳には一言一句逃すことなく聞こえてきた。どうしようもなく愛しい気持が湧き上がってくる。
「……もちろん、そのつもりだよ。此方こそ宜しく、利吉くん」
「はい」
僅かに顔を離し、互いに小さく笑いあうと、再び自然と惹かれあい口付を交わす。心の奥底でずっと望んでいた相手の感触に幸福な気持ちを覚えながら、半助は腕を伸ばし、部屋を照らす電球の電源を切った。