どこか遠くへ
椅子に座り込んで雑誌と睨みあっているアルフレッドを見て、アーサーは溜息を零した。
アルフレッドが見ている雑誌というのは旅行関係のものだ。表紙には大きく『格安学生旅行特集!夏休みはこれで決まり!』と書かれている。テーブルの上にはアルフレッドが手に持っているのとは違う雑誌――勿論全て旅行関係の雑誌――の数々でごった返していた。勿論、全てアルフレッドが集めてきたものである。
「うーん、やっぱりアメリカかなあ。でも俺はこの前帰ったばかりだし」
「おい、とりあえずテーブルから雑誌退けろ。昼飯が食えないだろ」
キッチンに居るアーサーがカウンター越しに声をかける。アルフレッドが雑誌から目を上げて、アーサーへと視線を向けた。
「アーサー、君は何処がいい?」
「前も言っただろ、お前の行きたいところで良いってば。……ほら、早く退けろ。飯いらないのか?」
「いる」
パタンと雑誌を閉じて、アルフレッドが机の上の雑誌を纏め始めた。その様子を見て再び溜息を吐いてから、アーサーはパスタを二つの皿へと分け始めた。今日は珍しい事にパスタのゆで加減がうまくいった。ミートソースは市販のものを使っているから不味くなる事はないだろう。
片手に一つずつ皿を持ってリビングへ出ると、テーブルの上は確かに綺麗になっていた。その代わり今度はソファの上にこんもりとした雑誌の山が築かれている。苛立ちを通り越して呆れを覚えながらコトリと皿をテーブルへと載せた。
「珍しく上手くいったみたいだね」
目の前に置かれた皿を見てアルフレッドが感嘆の声を上げた。まるで奇跡でも起きたかのような扱いに、ひくりとアーサーの頬が引き攣る。
「別に俺だって市販品を使えば人並み程度には出来る」
「へえ。じゃあこれからはずっと市販品を使ってくれよ」
「……お前だって大して上手くないくせに偉そうに言ってんじゃねえ」
アーサーがフンと鼻を鳴らす。会話がようやく途切れたので、二人は存在を主張するように湯気を立てるパスタへと取り掛かった。
「で、アーサー。君だってどこか行きたい国ぐらいあるだろう?何処でも良いってのが一番困るよ」
くるくるとフォークにパスタを巻きながらアルフレッドが言う。アーサーはすぐに返事をしなかった。口の中にパスタがあったからである。ゆっくりと咀嚼して飲み込んでから、ようやくアーサーは口を開いた。
アルフレッドが見ている雑誌というのは旅行関係のものだ。表紙には大きく『格安学生旅行特集!夏休みはこれで決まり!』と書かれている。テーブルの上にはアルフレッドが手に持っているのとは違う雑誌――勿論全て旅行関係の雑誌――の数々でごった返していた。勿論、全てアルフレッドが集めてきたものである。
「うーん、やっぱりアメリカかなあ。でも俺はこの前帰ったばかりだし」
「おい、とりあえずテーブルから雑誌退けろ。昼飯が食えないだろ」
キッチンに居るアーサーがカウンター越しに声をかける。アルフレッドが雑誌から目を上げて、アーサーへと視線を向けた。
「アーサー、君は何処がいい?」
「前も言っただろ、お前の行きたいところで良いってば。……ほら、早く退けろ。飯いらないのか?」
「いる」
パタンと雑誌を閉じて、アルフレッドが机の上の雑誌を纏め始めた。その様子を見て再び溜息を吐いてから、アーサーはパスタを二つの皿へと分け始めた。今日は珍しい事にパスタのゆで加減がうまくいった。ミートソースは市販のものを使っているから不味くなる事はないだろう。
片手に一つずつ皿を持ってリビングへ出ると、テーブルの上は確かに綺麗になっていた。その代わり今度はソファの上にこんもりとした雑誌の山が築かれている。苛立ちを通り越して呆れを覚えながらコトリと皿をテーブルへと載せた。
「珍しく上手くいったみたいだね」
目の前に置かれた皿を見てアルフレッドが感嘆の声を上げた。まるで奇跡でも起きたかのような扱いに、ひくりとアーサーの頬が引き攣る。
「別に俺だって市販品を使えば人並み程度には出来る」
「へえ。じゃあこれからはずっと市販品を使ってくれよ」
「……お前だって大して上手くないくせに偉そうに言ってんじゃねえ」
アーサーがフンと鼻を鳴らす。会話がようやく途切れたので、二人は存在を主張するように湯気を立てるパスタへと取り掛かった。
「で、アーサー。君だってどこか行きたい国ぐらいあるだろう?何処でも良いってのが一番困るよ」
くるくるとフォークにパスタを巻きながらアルフレッドが言う。アーサーはすぐに返事をしなかった。口の中にパスタがあったからである。ゆっくりと咀嚼して飲み込んでから、ようやくアーサーは口を開いた。