どこか遠くへ
「大学生にもなって子供みたいな事言うな」
嘆くように言ったアルフレッドにアーサーがすかさず呆れ声を上げる。嫌そうに椅子から降りてゴミ箱へと向かうアルフレッドの背を一瞥してから、アーサーは最後のひとくちを口へと運んだ。
「結局カナダでいいのかい?」
「俺はな。お前はそれで良いのかよ?」
戻ってきたアルフレッドが聞くと、アーサーは自分もナプキンで口元を拭きながらたずね返した。本日の皿洗いの当番であるアルフレッドは、二人の皿を重ねてシンクへと運びながら力強く頷く。
「ああ、構わないぞ」
「じゃあ決定だな。ちゃんと9月空けとけよ。航空チケット手配してからじゃ金は返ってこないんだからな」
「解ってるよ。うん、今から楽しみだ」
食後の紅茶を楽しもうとティーカップを用意しながらアーサーが言うと、アルフレッドはがしゃがしゃと危なっかしい音を立てて皿を洗いながら目元を緩ませて笑った。