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最果てに咲くスターチス

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臨也のひとりごと‐B


 俺はケータイを取り出すと、電話帳から帝人くんのアドレスを呼び出した。
 メールを送るとすぐに返事が返ってきて、一緒に夕飯を食べる約束を取りつけた。やったね!

 会いたいと思う時に、好きなだけ会えればいいのに。でもあの子はそういうところを妙に気にするというか、口実がなきゃメールも電話もくれないし、会ってもくれない。つまんないね。
 ま、当たり前って言えば当たり前か。俺たちはまだそこまで気易い関係じゃないし。

 そうと決まれば、現金なことにお腹が空いてきた。基本的に食べるのが好きってわけでもない性格で、俺はどっちかといえば生命活動における義務程度にしか思っていない。でも、たまに帝人くんと食べる食事だけは違った。
 それだけじゃない、何気ない会話をしている時も。
 俺は妙に帝人くんに気を惹かれた。『ダラーズ』のトップとしてのスイッチが入った時はなかなか面白かったけれど、日常生活でもたまに興味深い仕草を見せてくれることがあった。

 どんな話に目をきらめかせる?何を食べて美味しいと笑顔をこぼす?もっと知りたい、いろんなこと。今からでも遅くはない、帝人くんに好きだって言って、抱きしめてキスしたらどんな顔をするか。
 びっくりするくらい清廉な人生を歩んできた彼だから、きっとそれだけで顔を真っ赤にするんだろう。うわあ、それはすごく見てみたい。

 思えばふたりきりで会う機会は少なかった。しかも、いつも池袋や新宿の人ごみの中だ。うちにくればふたりっきり、ゆっくりと帝人くんを堪能できる。
 楽しみだなあ!

 時計を見ると、そろそろ帝人くんが、うちの住所すら知らないのを思い出すはずだ。自宅に帰った俺はパソコンを立ち上げると、自分のマンションまでの地図を作成した。

 早くおいで、帝人くん。すごくすごく、君に会いたいんだ。


* * *
作品名:最果てに咲くスターチス 作家名:美緒