Last Scenes
エピローグ
ああ、やっぱりすっかり秋だね。虫が鳴く声が聞こえてくる。あれは鈴虫かな。こんな都会なのに聞こえてくるものなんだね。なかなか風流で秋の夜長に相応しいねえ。
さて、随分と夜も更けてきたね。長い話につき合わせて悪かったよ。私の話はここまでにしよう。
え、続き? それは知らないよ。それ以降、僕はこの中二病患者の友人とは会っていないしね。どうなったのかまでは分からないんだ。彼は当然のように嘘をつく男だから、ただの長いホラ話かもしれない。
たとえこのIの言うことが事実だったとしても、結局彼は何一つ過去を変えていない今に戻ってきたわけだろ?
だからつまり、違う形の過去を作って夢に見ただけなんじゃないかとも思うんだ。もしくは、一瞬だけ並行世界に飛んだとか。
まあ、答えは分からないけどね。
オチのない話で悪かったね。しかし、このI も本当、いくつになっても精神は中学二年のまま止まってるよね。何年も目を逸らせなくて、出会いからやり直しても傍にいたい理由なんて、少し考えればすぐに分かりそうなものだけど。それを何度も何度も繰り返してようやく認めるあたり、往生際も悪いよ。
って、君、少し顔が赤くなってるよ。酔いがまわってきた?
ああ、そういえばセルティに聞いたんだけど、君、最近恋人が出来たんだって? 今度はその恋人の話も聞かせて欲しいな。一体どんな口説き文句を言われたんだい。
僕の予想だと、紆余曲折を経た君達に相応しく、婉曲的な告白だったんじゃないかと思うんだよね。例えば彼が、何年も君に関わり続けた理由とか。
おかしな告白かもしれないけど、君は彼のそういう変なところが結構好きなんでしょ。って、痛たたたた痛いよ!
えっそれってもしかして照れ隠しかい痛たたたたごめんなさいごめんなさい離して骨が砕ける!木っ端微塵に砕ける!! ごめん、もう茶化したりしないから許して! 助けてセルティー!!
(Last Scenes 完)
作品名:Last Scenes 作家名:サカネ