I eat up your heart. Ⅰ
世界で最も有名な時計台…ビッグ・ベン。
その上で二人の青年が夜風に吹かれていた。
片方は金髪で黒いマントを纏うバンパイア…
もう片方は黒髪に獣のような耳をはやした人狼…。
今宵も血の宴が始まる……。
懐中時計が12時を指す。
「…やっぱ、この時計早ぇな。」
独り言をつぶやくとそれに重なるように時計台の鐘が鳴った。
「そんなん、ちょっとぐらいやん。俺やったら気にせんで…」
隣に腰かけていたトニョが苦笑する。
「アーサーは腹減ってるん?」
「んー…減ってる、な。」
「せやったら、ほら、あれ見える?」
そう言いながら、眼下の川に架かる橋を指さす。
そこには一人の婦人が歩いていた。
「若そうやなぁ…。こんな時間に独り歩きなんて感心せぇへぇんで…」
その瞬間、トニョの緑色の瞳が血のような赤に変わる。
「恋人にでも会いに行くんじゃねーの? …かわいいこった。」
自分でも顔が歪むのがわかる。
獲物を目の前にして興奮しない狩人がいるわけない。
「血はアーサーにやってもえぇけど、肉は譲らんで。」
「大丈夫だ。俺は血しか吸わねぇよ。」
「それじゃ…行こか!?」
「あぁ…」
時計台から華麗に飛び降りる。
風が耳元で斬れていく感覚を残したまま、俺たちは獲物に向かって走り出した。
その上で二人の青年が夜風に吹かれていた。
片方は金髪で黒いマントを纏うバンパイア…
もう片方は黒髪に獣のような耳をはやした人狼…。
今宵も血の宴が始まる……。
懐中時計が12時を指す。
「…やっぱ、この時計早ぇな。」
独り言をつぶやくとそれに重なるように時計台の鐘が鳴った。
「そんなん、ちょっとぐらいやん。俺やったら気にせんで…」
隣に腰かけていたトニョが苦笑する。
「アーサーは腹減ってるん?」
「んー…減ってる、な。」
「せやったら、ほら、あれ見える?」
そう言いながら、眼下の川に架かる橋を指さす。
そこには一人の婦人が歩いていた。
「若そうやなぁ…。こんな時間に独り歩きなんて感心せぇへぇんで…」
その瞬間、トニョの緑色の瞳が血のような赤に変わる。
「恋人にでも会いに行くんじゃねーの? …かわいいこった。」
自分でも顔が歪むのがわかる。
獲物を目の前にして興奮しない狩人がいるわけない。
「血はアーサーにやってもえぇけど、肉は譲らんで。」
「大丈夫だ。俺は血しか吸わねぇよ。」
「それじゃ…行こか!?」
「あぁ…」
時計台から華麗に飛び降りる。
風が耳元で斬れていく感覚を残したまま、俺たちは獲物に向かって走り出した。
作品名:I eat up your heart. Ⅰ 作家名:狼華