I eat up your heart. Ⅰ
飛び降りるときに微かではあるがタンっという音がした。
アーサーがたてた音…心底ひやりとしたものだ。
人狼はバンパイアに比べてかなり耳がいい。
たてた本人は気付かなかったようだが、こっちのことも考えてほしいものだ。
「おい、トニョ。」
「ふぇっ!? どどどどしたん?」
ふいに話しかけられ変な声を出してしまう。
「どっちがしとめる?」
アーサーが口の端から鋭い牙をのぞかせながら問うてきた。
「えぇーと……アーサーがしとめてえぇよ。食べる順番からしてもそうやし。」
「そうか…じゃ、行かせてもらうぜ!」
嬉しそうな笑みを浮かべてアーサーはマントを翻した。
…本当に表情を出すのが下手な奴だと思う。
こういうときでしかアーサーの笑顔が見れないのはとても残念だった。
作品名:I eat up your heart. Ⅰ 作家名:狼華