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シキイザ

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以前住んでいた街、池袋。
住処を変えた今、来訪者として訪れても、この街は自分を喜んで受け入れてくれる。
この街に集まる者達は多種多様で、それにより毎日少しずつ違う顔を見せてくれる。
一つ石を投げ入れればその波は静かに漂って広がり、二つ三つと石を増やせば、波紋は形を変えてうねりを見せる。
だからこそ、この街は面白い。


昼も活気があるが、夜はまた別の顔を見せるこの街。
裏で蠢く人間模様はとても興味深く、臨也の好奇心をそそる。
そんな臨也に近付く、一台の車。
辺りを包む闇同様の黒塗りのそれは、一目でその筋の者が乗っていると解る。
そして、臨也には、中を確認せずとも乗っている人物さえも解る。

臨也の歩くスピードに合わせ、減速した黒い車。後部座席のスモークが張られた窓がスッと開き、中から白いスーツ姿の男が顔を覗かせた。
「やぁ折原さん、奇遇ですね」
発せられたのは、爽やかで丁寧な声。
些か、顔に似合わない。
「これはこれは、四木さん。ご無沙汰しております」
負けず劣らず、爽やかな声を返す臨也。貼り付けた笑顔は、板に付いている。
「如何です?ドライブでもしませんか?」
「ドライブ…ですか…」
嫌な予感が、臨也に過ぎる。
少々、厄介な事になりそうな予感がする。
しかし四木の瞳は、拒否を許さない程鋭い物だった。
この後、特に予定も無い。
今後の事を考えると、この男とは友好関係を続けていた方が得策。
と思っている間にも車は止まり、四木はシートの奥へと移動していた。
まだ返事をしていないのだが、有無を言わせぬ状況に臨也は少々眉を寄せる。
此処まで来ては、拒む事出来ない。
仕方無く臨也は開けられたドアに近付き、空いた席へと腰を下ろした。

四木が運転手に合図すると車は滑る様に発進し、辺りの景色が後ろに飛び始めた。
しかし、特に何処かへ移動する雰囲気も無い。
目的も無く街を流している様子に、臨也は警戒しつつも声を掛けた。
「で、今日は何です?」
「いやぁ、最近お話していなかったもので」
「…世間話ですか?」
「まぁ、そんな所ですね」
年下の自分に、敬語で話すこの男。
粟楠会の幹部なのだが、いくら何でも、そんなに暇では無い筈。
何か言いたい事があるのは見え見えなのだが、臨也は素知らぬ振りで流れる夜景を眺めていた。
 
しかし、隣から痛い位の視線が送られ、臨也は眉間の皺を深くする。
気付かぬふりを決め込もうかと思ったが、視線は尚も臨也を突き刺し、そうも言っていられない。
仕方無く車内に視線を戻すと、ニッコリとした笑みに変えた四木が居た。
「…何なんです?」
「いやぁ、貴方にはいつもお世話になって」
「いえいえこちらこそ…って、どうされたんですか?何か言いたい事がある様に見えますが」
今更、世話も何も。

わざわざそんな事を言う為に車に乗せた訳でも無いだろうに。
中々真相に迫らない四木に痺れを切らし、臨也は単刀直入に聞いてみた。
しかし、四木は尚もはぐらかす。
「そうそう、最近ですねぇ、飼っている子が無鉄砲過ぎて困ってましてね」
「飼っている?…犬ですか?」
四木が犬を飼っていると言う話は聞いた事が無い。
恐らく、本当の犬では無く、手駒の事を言っているのだろう。
「まぁ、そんな所ですね。その子がですねぇ、上手く『取って来い』が出来なくて困ってるんですよ。取ったは良いが、それで遊んでしまうんです」
「…そうですか。まぁ、個々に意思がある限り、それを完全に手懐けるのは難しいんじゃないですか?」
四木の比喩の対象が何なのか、臨也にも検討は付く。
しかし、臨也は非常線を張りつつ、敢えて解らぬふりをした。
「そうですねぇ、野放しにしておいた私にも責任はあると思って、反省はしているんですよ。なので、此処等で手綱を締め直さないとと思いましてね」
そう言いつつ、四木はスーツのポケットの中に手を突っ込む。
そして中から、ある箱を取り出した。
「折原さん、チョコレート、食べますか?」
「…はい?」
いきなりそんな事を言われ、臨也は珍しく声を裏返した。
と同時に、チョコレートと言う単語に、臨也は少し身を強張らせた。
この二人の間で「チョコレート」と言えば、アレしか無い。
四木はそんな臨也に気付いているのかいないのか、暢気にビニールの封を切った箱を差し出して来る。
見ると本当にチョレートで、スライドさせてある箱の中に、小さなチョコが入っていた。
「そこのコンビニで買いましてね」
「四木さんが…ですか?」
少し、いやかなり不釣合いな光景。
勿論、三十代の男がチョコを買って食べても良いのだが、四木には不釣合いな気がする。そもそも、チョコが、と言うより、甘い物が好きと言う話も聞いた事が無い。
何か、裏でもあるのだろうか。
「何も入ってませんよ。さっき封を開けたのを見ていたでしょう?」
「いえ、別に…」
不審に思っていたのが解ったのか、四木は笑いながら左右に少し箱を振った。
中には、小さな丸い形のチョコが多数入っている。そのチョコ達が、箱の中でコロコロと音を立てた。
「遠慮なさらずに、ほら、好きなんでしょう?チョコレート。さあ、お一つ、どうぞ」
「いえ、別に俺は…っ…ちょっ、四木さ…ぅぐっ…」
戸惑う臨也の口に、チョコが押し込まれる。四木の手によって。
「んっ…ふ、ゥッ…ぐっ…カハッ…」
その儘四木の指は臨也の口腔に入り込み、舌を掴む。
その手を退けさせようと臨也は四木の手を掴もうとするが、もう一方の手で押さえ込まれ、臨也の抵抗は無駄に終わった。
外に脱出しようとするが、当然の事ながら、ロックが掛かっておりドアは開かない。
その間も四木の指は臨也の口腔内を蠢いており、時折細く長い指が喉まで達し、臨也は咳き込んで瞳を潤ませる。
口に指を入れられた儘隅に追い遣られた臨也は、苦しそうに顔を歪ませた。
「ふ、ぅ…んっ、グフッ…」
屈辱的な悔しさと生理的な苦しさから、臨也の目には涙が浮かんでいる。
閉じる事が出来ない口元からは唾液が溢れ、四木の手を濡らして行った。

後部座席での出来事等知らん顔で、運転手は平然と車を走らせている。
信号で止まっても、スモークが張られている為、歩行者からは見えない。
それを良い事に、四木は尚も臨也の口腔を蹂躙して行った。
「んっ…クッ…ぅ…や、ぁ…」
臨也の口中でチョコが溶け、四木の煙草臭い指と相俟って何とも言えない味になっている。
それよりも、早く指を抜いて欲しくて、臨也は涙目で懇願する。
しかし、四木はそれを聞こうとはしなかった。
「ぁ…ゃ…ッ、ふ、ァ…ンッ…」
四木の指先が、臨也の口腔内の上顎をなぞる。
ゾクゾクとした感覚が臨也を襲い、思わず喘ぎに似た声が漏れた。
コートのポケットの中には、ナイフが忍ばせてある。
しかし、この人を相手にナイフで切り付ける様な真似は出来ない。
仕方無く、躯を撓らせて逃げようとする臨也。
しかし狭い車内に逃げ場は無く、臨也は四木の指に翻弄され続けた。

少し経つと抵抗する気も失せたのか、臨也は躯の力を抜いた。
それを見計らい、四木も臨也を攻める手を緩めた。
そして、耳元でそっと囁く。
「ちょっと、おいたが過ぎるんじゃねぇか?臨也」
「っ…」
作品名:シキイザ 作家名:りら