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鷹乃爪太郎
鷹乃爪太郎
novelistID. 17799
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始まりの調べ

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◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

一つの世界に一人の、この世界の住人ではないりヴリー、琥流栖がやってきた。
 この世界は日が照っていてなんだかとても暖かだ。と琥流栖は思った。
さっきまで放浪していた世界は雨が降った世界、すでに住人が死に絶えた世界、主人が気分を変えない限り永遠の夜の世界、放置りヴが餌を求める世界と、味気がないか、なんだかさみしげな世界ばかりだったからだ。

「ここあたりならお昼寝ができそう・・・・・^^」

―――昼眼するための場所探し。

 琥流栖は男が苦手だ、見るだけでも足がすくむくらい。それでも、放浪してるのはこのためである。
正直琥流栖にとっては3度の食事よりも昼寝が好きだ。いやなことを忘れられる唯一のひと時でもある、そして、あの忌まわしい記憶からも…。

「・・・・・・・・ふぁー・・・・・・。」

ちょうど昼寝によさそうな草むらを見つけ寝転がり始めた。

だんだん意識が遠のいていく。

(これであの過去のことが全部夢だったらな・・・・・。)


 何度も夢を見る、とても幸せな夢。

 あの時の悪夢は実はとてもひどい悪夢で、

 気が付くと自分の島の草むらで眠っているの。

 それでご主人が

 「いい加減起きろ、ネボスケ」

 そう言って軽く頭を叩いて、

 夏果のことを紹介し始めるの。

 この夢はあの事件が起きてからずっと見続けている。唯一の幸せ。


・・・・・・・・♪ー♪♪・・・・♪・・・


「・・・・・・・・?」

 8割夢の世界に足ではなく頭を突っ込んでいた琥流栖は柔らかな音で意識が少し覚醒した。まだ頭を体と、瞼が重い。

「・・・・・・・曲・・・?」

 何かを弾いている音だ。何の音だろう。電子機器の音でもないしエレキギターの類でもない。今まで聞いたことのない楽器の音だった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

気になる、すごく気になる。でも、そこに男がいたら…そう思うと怖い。
あの事を思い出して、怖い、恐い、コワイ――。

「・・・・・・そうだ!」

だったらこっそり見ればいいや、ばれなきゃ大丈夫。もしモンだったら急いで夏ちゃんの神社に逃げればいいし!

「・・・・・・よし!」

琥流栖は意を決して音が出ている場所へと向かった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

その頃――

「・・・・・・ねえちゃんがいない!」 

夏果が大声で叫んだ。

「・・・・・・夏、うるさい」

「五月蠅いも臭いもない!くぅねえがいないんだってば!」

「昼寝の場所探しにでも行ってるんでしょ・・・・・?」

その一言で夏樹は一気に顔が青ざめた。

「姉ちゃん!なんで俺と一緒に行かないの!?外の世界は危ないっつーのに!!」

爪太郎は思わず溜息を吐いた。

「あのナ、夏。あれもそろそろ16,7の年頃の子だよ?弟と一緒にルンルン手つないでいくわけないでしょ?」

「変な言い方やめろ!キモい!それに姉ちゃんまだ、攻撃技だって覚えてないし・・・・・!」

「むやみやたらとお前見たくに攻撃技覚えて使いまくっても長生きできるとは思わんけどね。」

「うっせえ、このマダオ!とにかく俺は姉ちゃん探しに行ってくるからな!」

どたどたと、スニーカーをあわててはいて、夏果は移動していった。

「・・・・・やれやれ。」

爪太郎はまた溜息をついた。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

・・・・・♪~♪・・♪♪・・・・♪ー

「・・・・・きれい・・・。」

 琥流栖は今まで聞いた元のない音色を石柱の影で聞いていた。
 不思議な音だと琥流栖は思った。今まで聞いたことのない音色。ギターみたいにざっくばらんな音とも違う。心にどしどし来るような音色じゃない。かといって刺さってくるような音色でもない。心に水みたいに入り込んでくる音だ。
 不思議な感じがしたがいやな感じはしなかった。むしろ心地よかった。

「・…もっと近くで聞いてみたいな・・・・・。」

 琥流栖の好奇心が頭をもたげ始める。この際モンでも、魔物でも、なんでも良かった。この音が近くで聞けるのなら。
 石柱から石柱へとそろそろ移動しながら、だんだんと音源の近くに移動していく。

「ばれないように、ばれないように・・・・・・・・!」

琥流栖は自分が人よりトロく、鈍いことを分かっているため、慎重に足元の石などに注意を払いながら進んでいく・・・・。
 だんだんと音がはっきりしてきた。遠くで聞くよりも響く音。「響く」音なのだ。今までに琥流栖がきいた音とは本当に違った。

「・・・・・・ん?」

 曲に聞き入っていたが、気が付くと弾いている人の姿が見える。琥流栖は好奇心に身を任せ、姿をのぞいてみた。が、

ガキッ!

「・・・・・・あっ・・・・?!」

最後の最後で、足が石に躓いたのだった。

ベチャッ!

自分でも聞いててすごく悲しい音を立てながら顔から着地した琥流栖は打ちつけた顔を手で覆いながら起き上がり涙声になりながら琥流栖はつぶやいた。

「いたい・・・・・・。」

これは治るのかな、どうしよう、痛い・・・・・。
いろいろ考えている琥流栖の上から声が降ってきた。

「・・・・・・立ち聞きとはずいぶんいい趣味をしているんだな・・・・。」

「・・・・・・ふぇ?・・・・あっ・・・・!」

 上から見下ろす不機嫌そうな顔がそこにあった。

(・・・・・きれいな顔だな・・・・。)
 自分よりもはるかにきれいだ。琥流栖はそう思った。恐らく声の質としゃべり方からして男の人でだろう。自分より色が濃い桃色の髪、紅茶のような赤い目、端正な顔立ち、同じ桃色の髪なのにかなり違うなぁ、とぼんやりしながら思った。

「おい、聞いてるのか?・・・・・・それにしても、こんなところで転ぶなんてドジな奴だな。」

ハッと意識が元に戻ったときに呆れた声が聞こえた。
 たしかに、目立つ石にはコケないくせにこける要因とは程遠い石にこけてしまったのだ。呆れられても仕方がない。

「えっと、その・・・・ごめんなさい・・・・・・。」

 琥流栖は思わずしょんぼりとうつむいてしまった。
 そうだよね、立ち聞きなんてして・・・・・情けない、恥ずかしい・・・・。早くここから出て行こう…。そう思ったその時、

「さっさと立て、それともこのまま、すわっていたいのか?」

声がまた聞こえた。そして見上げると手を差しのべられていた。

「あ・・・・・・・。」

「起こしてやるから・・・・・・・・・・・手をとれ・・・・。」

「あ・・・・・はい・・・・・。」

琥流栖は手をとろうとした。だが、

「・・・・・・ぁ・・・・・!!」

忌まわしい記憶が体を通してよみがえる。口が異様なほどに乾いていき、全身が冷えて、肩がふるえる。

「・・どうした。・・・私に手を取られるのが嫌か…?」

「・・・・違い、ます・・・!…………怖いんです……。」

「怖い・・・・?」

「・・・・・男の人が・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・。」

 もう駄目だ、今度こそ嫌われた。なんて自分はダメなんだろう。思わず泣きそうになった。目に涙があふれてきそうだった。

「・・・だったら男じゃなくて置物と思えばいい。」
作品名:始まりの調べ 作家名:鷹乃爪太郎