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鷹乃爪太郎
鷹乃爪太郎
novelistID. 17799
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始まりの調べ

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「へ・・・・・・?」

琥流栖は顔を上げた。

「一人の男じゃなくて、一つの置物が手を差し伸べてると思えばいい。」

そういうと男の子は琥流栖の手を取った。

「!」

身をすくませた琥流栖にすかさず

「置物」

と男の子は言った。

「あ、はい・・・・。」

この人は、置物置物置物・・・・・・・。

すると念じる方に意識が言ったのか、あまり気にならなくなった。気が付くと立ちあがっていた。

「あ・・・・・・・。」

「まったく…・手間をかけさせおって。立ち聞きする勇気はあるのにな。」

ハッと気が付くと自分はその人の手を握っていた。

(あったかい……。)

異性の手を握るのはあの事件にあう前以来だ。滑らかな肌だけど少しだけ、女性と違うような、つくりをしていた。
 これが男の人の手なんだ・・・・。
 改めて思うと顔が赤くなっていった。
「あ、あの・・・すみません!・・・ありがとうございます・・・・!」

「・・・・・次からはこけないように気をつけろ。」

手を離すとそういい、顔をそっぽ向けた。

「あ、あの・・・・・。」

「なんだ?」

嫌がってる感じはしなかったので、思い切って琥流栖は言ってみた。

「名前を・・・・聞いてもいいですか・・・・・?」

「なんでだ。」

あ、明らかに警戒してる。当たり前だよね。

「……あの・・・・弾いてた曲……もう一度聞きたくて・・・・。」

「・・・・・・・・・・。」

「あ、やっぱり迷惑ですよね・・・・。こけちゃうし、とろいし・・・。」

「・・・・・クレスだ。」

「へ・・・?」

「私が名乗ったんだ、お前も名乗れ。それとも、自分の名前を言えないほどにお前は鈍いのか?」

「あ、あの、すみません…わたしは琥流栖(クルス)です。」

「・・・聞いていけ。」

「あ・・・・・。」

繊細な調べが流れ始めた。耳に心地よい音が流れ込む。

―――体の隅まで沁み渡ってくみたい……気持ちいいなぁ・・・・・。

しばらくの間、琥流栖は曲を聴き続けていたのだった…。
 その後、クレスが曲を弾き終わりかえる時がきた。
「あの・・・・。」

「ん?」

「・・・・・また・・・・ここに来ますか…?」

「わからんな。一応ここは誰か住んでるようだし、お前みたいな変わり者じゃなきゃ弾く気にならなかったしな。」

「あうぅ・・・・・・そうですか・・・・。」

「おい琥流栖。島の名前は?」

「え・・・・?・・・・・Capsicum島・・・・。」

「・・・・・私の機嫌がよかったら。そっちに来てやる。」

「・・・・・!」

「何だ、その目は。迷惑なのか?」

「い、いいえ、もう全然!」

こうして、琥流栖は初めての男友達ができた。

ーつづくー
作品名:始まりの調べ 作家名:鷹乃爪太郎