僕のmonster
前篇
彼女は自分を化け物だと言った。人が生み出した『時間』で数えれば、何百年も生きている化け物だと。
だから君は連れていかないよと、蒼の眸を淡く輝かせて笑った。
(何で、だって、俺も、化け物なのに)
そう告げたら、馬鹿な子と額をデコピンされた。結構な痛みに思わず蹲ると、同じように膝を曲げて視線を合わせた彼女が困った顔をして言った。
(君はひとだよ。確かに他の人間よりは力があって、切れやすいけど、君はひとだ。ただの、ね)
化け物の僕が認めるんだから、信じなさい。
優しく、温かく、けれどどこか突き放すように言って、彼女は立ち上がった。
(もう、行かなきゃ)
ぽつりと落ちてきた音に、行くなと細い腰にしがみ付いた。彼女は化け物だから、恐ろしい力を持っている自分が思いっ切り抱きついても壊れはしない。彼女はため息を吐きつつも、しがみ付く子供の頭をそっと撫ぜた。
結局、彼女は去っていった。
大人になった静雄が未だ忘れられない約束を残して。