さよなら天国、また来て地獄
「種はそりゃあ俺と帝人君の仲だからいつでもどこでも取り放題」
「死ね」
「空気に触れてすぐ死滅し出す息子というか帝人君の分身をちゃんといかせるように俺は頑張って」
「死ね」
足を思い切り踏んでも堪えることのない男に帝人は低く冷たく突き放す。
唖然とした正臣がいなければとりあえず手元にあったボールペンで目でも抉ってやっただろう。
「仕方ないじゃん。帝人君の子供欲しかったんだもん」
「私も」
沙樹が手をあげる。
どういう繋がりかさっぱりだ。
頼まれたから請け負ったというだけではないのだろう。
「私と正臣と帝人の三人で育てます」
「俺は?」
「足長おじさんですか? もういいですそういうことで。僕は三ヶ島さん、沙樹さんと正臣と暮らしますから」
近寄ってくるなと言いたげな帝人に「出産の費用も育児費用も全部出すから子供と帝人君は置いてって」と外道極まりない発言を平然とする。
「冗談じゃないです。子供の人格形成に問題があるような環境を好んで選ぶはずないじゃないですか」
「正臣を見て明るく帝人を見て強かな優しい子ができあがるの」
沙樹が「楽しみ」と笑う。
臨也が「話が違う」と拗ねる。
正臣が(おろすとかねぇよな? ねぇんだな)と考える。
帝人は一言「ふつつかものですがよろしくお願いします」と頭を下げた。
作品名:さよなら天国、また来て地獄 作家名:浬@