二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

キリングミーソフトリィ

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
裏切ったのは君だ、と、吸血鬼は言った。


私はいつものように、あの方の残した仕事を、私に許される範囲で片付け、そして火急の用務には一時的な代理として承認を下し、あの方ならこうしただろう、ああもしただろうといろいろと頭をめぐらせながら彼の留守を預かっていた。
トップに立つ人間を一時失っての組織はひどく不安定で、今まで彼の存在によってその動きの停滞を余儀なくされていた反乱分子などが不穏な動きを見せているとの情報も耳に入っていた。私はあの方の不在を嘆く余裕も、泣き言を口にする暇もなく奔走していた。組織が存在している以上、頭を失おうが足を失おうが走り続けるしかない。
私はいつもあの方の残した仕事に、そして増え続けるあの方のいなければ終わらない仕事に追われていた。
吸血鬼は、いつもそういった一切に構わず面白半分にぶらりとあらわれて、私の神経を引っ掻き回して愉快そうに帰っていった。
何が面白いのかと苛立ちもあらわに聞けば、分からないのかねとにやにやとした笑いを浮かべて答えられる。
この男はいつも人の神経を逆撫でる。


裏切ったのは君だ、と、吸血鬼は言った。
今君は幸せだろう。
私はいつものように無視をした。
幸せだな、嬉しいに決まっている。
吸血鬼は大げさに、芝居がかった身振りで大きく両腕を広げてみせた。
用務に追われて机を離れられない私の周りを大股で、ゆっくりと歩く。
そして朗々たる声で続けた。
君は幸せだ。
とても楽しそうに。
ザトーが死んで嬉しいだろう。
吸血鬼は、私が顔色を変えて立ち上がるのを、唇を引き上げる動作一つで制した。
まあ聞きたまえ、君だって気づいていたのだろう、そろそろ自分を騙すのも限界だったのではないかね?
実際君だって馬鹿じゃあない、気づいていたんだろう。君が絶対と信じ縋ってきたものが、実は神でも魔でも悪ですらなく、普通の生きて呼吸し笑い泣き怒り怯え安堵する、つまり飯を食い息をして生きる君と何も変わらない人間であったことに。
ザトーという存在であるより先に、ただの人間であったことに。
君は気づかないふりをしてきた。君は気づかないふりをしていた。君以外の誰もが気づいているのに君だけは強固に分からないふりをしていた。
君だけがザトーを人間だと認めなかった、違うかね?