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物体もじ。
物体もじ。
novelistID. 17678
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on your mind

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 もちろん、彼の意識もまた、ぼくに向けられていること。


 それだけなんだよ?



「きみにだけは、目を逸らされたくない、ってね。それって逆から言えばさ。要するに、きみがぼくを見てくれてさえいれば、それでいいってことなんだけど」

「……常々思ってたんですけどね。何でオレなんです」

「言ってほしいかい? 今、この場で」

「遠慮します」

「それは残念」



 わかっているけれどね。

 ぼくが、変わらない限り。ぼくが、彼と同じく真実を求め続けるのならば……ぼくの中に、一片でも真実があるのならば、ちゃんと彼がぼくを見ていてくれる、なんてことは。

 その視線を失うことなんてないと、確信しているけれど。


 それだけじゃ、足りないと、思ってしまうんだ。



「ま、とにかくさ。構っておくれよオデコくん」

「いくつですか、アンタ」



 気づいているんだろう、きみは、たぶん。

 そのため息に隠しているのが何なのか、ぼくには未だ見抜けやしないっていうのにね。


 仕方なさそうな顔をしながらハタキを下ろす彼はけっして、自分から構ってくれよう、なんてことはしないけれど、それでも、ちゃんとこちらをまっすぐに見上げてくれている。

 嫉妬させられたスパゲティナポリタンに見せつけるように触れても、ほんの少しも抵抗しなかった。

 塵を払われた事務所の中で、抱き締める彼の身体だけがほんの少し、埃っぽい。



「3分だけですから。オレ、忙しいですし」

「今じゃヒーローだって延長アンコールに応じるっていうのに」

「知りませんよ、そんなこと」



 常と変わらない声。

 いつまでも、ぼくは、彼から真実を引きずり出すことだけが、出来ないでいる。

 それはきっと、彼自身がぼくに協力してくれないから、なんだろうね。



 本当は、質問の答えなんてわかりきっている。

 目を逸らすな。そう言えば、きっと彼は当然のような顔をして、きちんとぼくを見てくれる。

 ぼくの中に、彼が見るべき真実がある限り。



 だけれど。

 本当は。

 どうか、それだけじゃなく。



「オデコくん。お願いだから、さ」









 目を逸らさないで。


 いつでも、ぼくを見ていてほしいんだ。










 きみが、きみ自身から目を逸らし続けるのならば、ね。






作品名:on your mind 作家名:物体もじ。