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愛す人、愛される人

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「帝人君はさ、愛されるよりも愛したい?それとも愛するよりも愛したい?」

臨也の家のリビングで二人並んでソファに座ってテレビを見ていた。
テレビ番組は年を選んで、その年に流行した曲を流している。
今流れているのは1997年に売れた曲の特集だ。
アイドル2人組が歌って踊っている。

そのタイトルは臨也が質問したそのままのものだった。

「女の人は自分を愛してくれる人と結婚するのが幸せだって言うよね。二番目に好きな人と一緒になるのが幸せだとも。帝人君はどう思う?」

よく歌いながら踊ることが出来るな、とテレビを眺めながら臨也の質問を考える。

「俺はね、やっぱり自分から愛したいね」
質問をしたくせに答えを待たずに出題者は自分の考えを勝手に話す。

少年は青年の勝手な振る舞いには慣れているので気にせずに、臨也さんならそうですね、と思った。
臨也は人間から愛して欲しいと思っている人だ。
ただし、その感情は自分が人間という種を愛してあげているんだから、人間も自分を愛するべきだ、という自分勝手な考えから来ている。
愛したがりで、でも、その愛は無償じゃなくて有償の愛。
臨也はそんな人間だと帝人は理解していた。

「俺は愛されているより愛さないとダメな人間なんだよ」

そう言って臨也は帝人の手を握って妖艶な笑みを作る。

自分が容姿端麗なことを理解して表情を作っているんだろうな、と帝人はその顔を見て思う。
そんな臨也は決して性格が良いとは言い難い。

帝人は、本当にこの人を好きになって良かったのだろうか。と常々思っている。
でも、惹かれた。
臨也の持つ非日常に。
その風貌に。その赤い目に。その声に。
両人差し指に付けられている指輪さえ今では愛しかった。

でも、帝人が一番惹かれた所は外見とか雰囲気とかそういうものじゃない。

「帝人君は、愛すよりも愛されたい人でしょ?」

人を見透かしたような目を青年は少年に向けた。
そして臨也は帝人の手にキスをした。手の甲に、手の平に、指先に。
その動作がくすぐったくて思わず身を捩る。

「だって、帝人君が俺を愛してくれたのは俺が帝人君を特別に愛したからでしょ?」

帝人は手の平を舐められながら目を真っ直ぐに射抜かれた。
「俺の愛が大きくて、心地よくて、それをずっと自分のものにしておくために俺を愛してくれたんでしょ?」

カリ、と軽く帝人の指を臨也は噛んだ。

「俺が帝人君を愛さなくなっても、帝人君は俺を愛してくれるのかな?」

帝人は臨也の声を聞きながら、やっぱり気付かれていたんだな。と思った。
臨也を好きになった理由を挙げていくとすると、外見だとか色々とあるけれど、一番はそれだ。
臨也は帝人を一番に愛してくれている。
その愛はたまに常軌を逸していると思うこともあるけれど、それさえも心地いいと思う自分がいるということを帝人は自覚していた。

「帝人君が俺を好きなのは、俺が君を愛していること、俺が有益な情報を持っていること、俺が非日常の存在であることっていうのが大きいでしょ?ああ、俺は君を責めているわけじゃないよ。帝人君はそれでいいんだよ。打算的なところも狡猾なところも愛してあげる。そんなずるいところだって、いかにも人間じゃないか。人間らしくて好きだよ。俺の情報だって好きに使っていいんだよ。帝人君になら欲しい情報は何だって与えてあげる。君は俺に愛されたんだ。特別なんだよ。それを利用して俺に愛されてるって実感したらいいよ。俺に愛されてるって実感して、優越感に浸っていいよ。それで、俺をもっと愛してよ」

臨也の言葉はぬるま湯に浸っている気分にさせる。
青年の愛はとても心地いい。

「でも、俺を愛して欲しいけど、俺の愛よりも大きくならないでね?俺は愛されるよりも愛さないとダメなんだよ。帝人君の愛の方が大きくなっちゃったら嫌だな。少しも愛さないなんて、それは許さないけど。でも、俺が愛されるより愛したくて、帝人君が愛するよりも愛されたいなら相性ピッタリだよね。そう思わない?」

臨也は我儘だ。
帝人の愛が臨也よりも大きくなったらどのような反応をするのだろう、と帝人は前から疑問に思っていた。

帝人も本当は愛されるよりも愛したいと思っている。
臨也を好きになったのは確かに臨也が好きになってくれたからだ。
でも、今では相手をより愛したいと思っている。

そう思っているけれど、より愛したいと思っている人はそれを望んでいない。
臨也は自分が愛さなくなったら、帝人は臨也を愛さなくなると思いながらさっきの言葉を投げかけたのだろう。
「俺が帝人君を愛さなくなっても、帝人君は俺を愛してくれるのかな?」と。
その返事は、(きっと、愛し続けてしまいますよ)だ。声に出さずに帝人は答える。

今では臨也の愛が大きいのか、帝人の愛が大きいのかは帝人は判断できていない。
臨也に聞けば、「俺の愛の方が大きいに決まっているよ」と言うだろう。
でも、それは帝人がそう見せているからだ。

臨也の愛は大きくて常軌を逸していると感じることはあるけれど、臨也の愛を留めておきたくて必死な自分もきっと異常さは変わらない。
留めて置きたいがゆえに、帝人は臨也の告白に対して気の無い返事をすることが多い。
本当は嬉しくて甘えたくなるけれど、そうですか、と言うだけにする。
そうすると、臨也は楽しそうに「帝人君はつれないなぁ」と言ってますます構ってくれるのだ。
その行為をして欲しくて愛が大きくないフリをする。

臨也を愛して愛して愛しぬいて、臨也に従順になったなら臨也は何というだろうか。
つまらない人間になっちゃったね、と言って別れるのだろうか。
臨也を好きで好きでたまらない自分を尻目に去っていくのだろうか。

今はそれがたまらなく怖い。

愛の大きさなんて量れるものじゃない。
目に見えるものじゃない。
だから、帝人は臨也を謀る。

愛しているけれど、そんなに愛していませんよ。と思わせる。

つれない態度を取って愛してもらう。
愛し続けて欲しいからこその態度。
愛に気付かれたらこの関係が終わってしまうかもしれないという考えがそうさせている。
作品名:愛す人、愛される人 作家名:彼方