愛す人、愛される人
テレビでは、件の曲はすでに終わっていて今は同じアイドルの違う曲を流していた。
男性が付き合っていた女性に浮気されて振られる曲だ。
その曲も終わって、次は結婚式の定番ソングがかかる。
臨也と自分の未来はどちらの曲に近いのだろうか。
出来れば浮気はされたくないな、と願う。
その怒りの矛先は女性だろうか、臨也だろうか。それとも自分になるのかわからない。
出来るだけ誰も傷つけずに生きていきたい。
だから帝人は臨也に愛の大きさを悟らせないようにする。
「帝人君、2人は相性ピッタリだね。って俺が言ったのに、それに返事しないで何考えてるの?」
臨也はさっきよりも強く帝人の指先を噛んで、目を射抜いてくる。
抗議のつもりだ。
(あなたへの愛について考えていました)
「CDの売り上げの枚数を聞いて驚いていました。ミリオンとか普通に売れてたんですね」
「ダウンロードとかが無い時代だからね。この時代のシングルはアルバムとは違う大きさのCDだったんだよ。…じゃなくて、帝人君にとって俺達の相性はどうでもいいことなのかい?」
少し拗ねたように臨也は言う。
(愛したがりと愛されたがり。それがあなたの言う相性ならば、自分達の相性はそんなに良くはない。愛したがりと愛したがりだ。)
「相性とか、どんな乙女のつもりですか」
「帝人君ひどーい」
楽しそうに歪んだ笑みを臨也は見せる。
「ひどい帝人君にはお仕置きだよ」
そう言って青年は少年をソファに押し倒す。
今日も青年は少年に愛を囁き、愛を注ぐ。
そして少年は愛を心に溜めたままにする。
愛が溢れ出ないように願う。
「臨也さん、重いですよ」
(どうか僕の愛の大きさに気付かないで)