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君という花

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 急に「あなたがたは血のつながった兄妹だったんですよ」と言われて、すぐにはいそうですかと受け入れられるはずがない。兄だの妹だのという新たな役割分担が、今さらすんなり馴染むはずがない。
 だからノルウェーは確かめたいのだ。
 自分がアイスランドにとって、どういう存在なのか。その口でお兄ちゃんと呼ばしめて、確認したかったのだ。

 アイスランドをベッドに下ろし、布団を整えてやりながらフィンランドは密やかに笑う。
「家族ってそんな部分もあるんじゃないかなぁ。それに、ターさんも言ってましたけど、ノルくんはやっぱりアイスくんのお兄さんだと思う」
「……だがら、どの辺がだ?」
「ふふふ」
 それは自分で気づけばいいです、と言わんばかりに。フィンランドははっきりと答を寄こしてはくれなかった。
「それじゃ、僕たちは帰りますね。アイスくんにもよろしく」
「ああ」
 フィンランドが他のふたりを連れて帰って、いよいよ家の中には夜の静けさが満ちる。
 デンマークやフィンランドが、やっぱりお前たちは兄妹だ、という。それはアイスランドにも分かっていない。
 アイスランドの頬に、彼のくちびるが触れる。
「いい夢を、アイス」
 けれども、何気ない夜のあいさつのキスに、ささやかれる声に、無機質なノルウェーのそれにほんのわずかのあたたかみが混ぜられていると。アイスランドが気づくようになったのは、つい最近のことだ。


* * *
作品名:君という花 作家名:美緒