なんでもない日に
東京都豊島区池袋、の某所にあるマンション。
外観は白を基調とした、モダンなそのマンションに、新宿の情報屋・折原臨也は頻繁にその足を運んでいた。
彼が目指すのは、いつも305号室。
表札に田中と書かれてあるそこには、彼の知人が住んでいるのだ。
臨也は勝手知った様子で鼻歌混じりにエレベーターに乗った。
このマンションのエントランスにはオートロックが設置されていたが、臨也は部屋のカードキー(合鍵)を持っていたので、一々知人に開けて貰う必要はない。
つまり、合鍵を貰う程、頻繁に行き来をしているのだ。
それはそうだろう、臨也は1週間の内だいたい4日はここを訪れている。
なので、他の住居者の人達には、ここの住人だと思われている事だろう。
臨也はエレベーターを降りると、305号室の前まで歩き、そのまま流れるような動作で鍵を開けて扉を開けた。
玄関は昼だというのに薄暗く、どうやら遮光カーテンを開けていないらしい。
臨也は壁にある電気のスイッチに手をかけて、ためらいもなく押した。
一気に明るくなる、室内。
よく見えるようになった廊下に、転々と放り投げられた洗濯物。
臨也は一つ溜息を吐いて、散らばる洗濯物を拾いながら奥に進んでいく。
「帝人くーん、生きてるー?」
中々に物騒な言葉だったが、あながち間違ってはいない。
臨也の知人であり、この部屋の住人、つまり竜ヶ峰帝人は、著しく生活能力に欠けていた。
臨也は仕事の関係で3日ここに来れなかったのだが、それでも3日前、確かに部屋を綺麗にしていったのだ。
放っておくと食事を取らない、もしくはサプリメントで済ませる帝人に作り置きした料理が冷蔵庫に入っているから食べるように言い、やはり散らばっていた洗濯物も洗濯乾燥の後綺麗に畳んでタンスにしまい、浴槽だって綺麗にして水を溜めておいた。ゴミだって纏めてゴミ捨て場に持って行ったのは臨也である。
非常に甲斐甲斐しい。それでもダメなのが、帝人という人間であった。
臨也は拾った洗濯物を、途中にある脱衣所の洗濯機に放り込んで、そこで足を止めた。
何故なら、浴室から覗く足に気付いたからである。
臨也は脱衣所の壁にあるスイッチを押して電気をつけ、足を辿り、その持ち主が帝人だと確認出来ると、再び深い深いため息を吐いた。
「…帝人君、お風呂に入ろうとした努力は認めるけど、なんで服着たままなの。」
まあ、脱いでたら風邪引いてただろうからいいんだけどね…などと呟きながら、臨也は転がっている帝人を抱え上げる。
そのまま寝室まで運んでいくと、ゆっくりベッドの上に下ろし、布団を被せて踵を返した。
臨也にはこれから、やる事が沢山あるのである。
外観は白を基調とした、モダンなそのマンションに、新宿の情報屋・折原臨也は頻繁にその足を運んでいた。
彼が目指すのは、いつも305号室。
表札に田中と書かれてあるそこには、彼の知人が住んでいるのだ。
臨也は勝手知った様子で鼻歌混じりにエレベーターに乗った。
このマンションのエントランスにはオートロックが設置されていたが、臨也は部屋のカードキー(合鍵)を持っていたので、一々知人に開けて貰う必要はない。
つまり、合鍵を貰う程、頻繁に行き来をしているのだ。
それはそうだろう、臨也は1週間の内だいたい4日はここを訪れている。
なので、他の住居者の人達には、ここの住人だと思われている事だろう。
臨也はエレベーターを降りると、305号室の前まで歩き、そのまま流れるような動作で鍵を開けて扉を開けた。
玄関は昼だというのに薄暗く、どうやら遮光カーテンを開けていないらしい。
臨也は壁にある電気のスイッチに手をかけて、ためらいもなく押した。
一気に明るくなる、室内。
よく見えるようになった廊下に、転々と放り投げられた洗濯物。
臨也は一つ溜息を吐いて、散らばる洗濯物を拾いながら奥に進んでいく。
「帝人くーん、生きてるー?」
中々に物騒な言葉だったが、あながち間違ってはいない。
臨也の知人であり、この部屋の住人、つまり竜ヶ峰帝人は、著しく生活能力に欠けていた。
臨也は仕事の関係で3日ここに来れなかったのだが、それでも3日前、確かに部屋を綺麗にしていったのだ。
放っておくと食事を取らない、もしくはサプリメントで済ませる帝人に作り置きした料理が冷蔵庫に入っているから食べるように言い、やはり散らばっていた洗濯物も洗濯乾燥の後綺麗に畳んでタンスにしまい、浴槽だって綺麗にして水を溜めておいた。ゴミだって纏めてゴミ捨て場に持って行ったのは臨也である。
非常に甲斐甲斐しい。それでもダメなのが、帝人という人間であった。
臨也は拾った洗濯物を、途中にある脱衣所の洗濯機に放り込んで、そこで足を止めた。
何故なら、浴室から覗く足に気付いたからである。
臨也は脱衣所の壁にあるスイッチを押して電気をつけ、足を辿り、その持ち主が帝人だと確認出来ると、再び深い深いため息を吐いた。
「…帝人君、お風呂に入ろうとした努力は認めるけど、なんで服着たままなの。」
まあ、脱いでたら風邪引いてただろうからいいんだけどね…などと呟きながら、臨也は転がっている帝人を抱え上げる。
そのまま寝室まで運んでいくと、ゆっくりベッドの上に下ろし、布団を被せて踵を返した。
臨也にはこれから、やる事が沢山あるのである。