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いつまでも、君が怖い理由

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「じゅ、十代目…!どうなさったんですか、この耳は?ああ、尻尾も…!」

「あは、ははは…」

キラキラと俺を見る獄寺君を前にして、もう乾いた笑いしか出てこない。
触ってみたそうに目を光らせている獄寺君に、いいよと告げれば「失礼します!」と恭しく礼をされてから、俺の耳に触れる獄寺君。

「…んっ、獄寺くん、もっと優しく…」

「ふぇ? ああ、す、すみません!」

ぐいっと指先で引っ張られた事で感じた痛みを顔に出せば、まさか神経と繋がっているとは思いもしなかったのだろう。蒼白になった獄寺くんが、土下座でもしそうな勢いで謝ってくる。土下座はいいよ、とそれを止めながら、俺はつい10分程前の事を説明する事にした。






***




ちくり、と痛みと呼ぶには弱い刺激。

「ほら、これで完治だ」

お礼を言うと、シャマルは苦い顔で笑った。

「ただな…」

「ただ?」

「相対するウイルスが、厄介なことに強力過ぎるんだ。まぁ、この俺の腕にかかれば見事中和されるんだけどな。24時間の間はこっちの症状が出ちまう」

「…症状って?」

その言葉に、なんとなく嫌な予感を感じ聞き返してみる。

「お前さんの事が"特別"なヤツに、もれなく猫耳と尻尾が見える疾患だ!」

なぜか威張りながら断言する殺し屋に、俺は大きく息を吸った。


「そう言う事は、早く言えーー!!!」





***




まぁ、こんな事があったんだけど(お蔭で今も喉が痛い)
"特別"のくだりは恥ずかしいので、獄寺君には伝えなかった。

「つまり、さっきまで十代目だけが俺に耳と尻尾が見えていた症状が治り、代わりに十代目に耳と尻尾が見えるようになったって事っすね!」

「うん。24時間だけみたいなんだけど…。その、ごめんね?俺の病気が治る代わりに、獄寺くんが見える方になっちゃって…」

男の猫ミミなんて見ても楽しくもなんともないだろうと思いながら謝ると、獄寺くんはきょとん、と"本当にわけが分からない"という顔をした。

「なんで十代目が謝るんですか?悪いのはシャマルのヤローだし、それに十代目はとてもお可愛らしいです!なんだか俺、得した気分っすよ!」

「…………っ…!」

「? …じゅーだいめ?」

獄寺くんは、これだから嫌だ。
猫ミミなんてみっともなくって嫌なのに(自分で確認出来ないから、尚更だ)獄寺くんがそう言って笑ってくれるなら、それもいいかな、なんて思ってしまう。


「―――このミミ、獄寺くんにしか見えないんだって」
(俺を、一番特別に思っていてくれるのは、君なんだよ)


「はい!すげー光栄っす!」



無邪気に笑う君の顔を見て。
ツキン、と心が痛むのは、どうしてだろう?

作品名:いつまでも、君が怖い理由 作家名:サキ