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カフェ【ワグナリア】にようこそ!!

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Café【ワグナリア】にようこそ!




佐藤→カフェ【ワグナリア】店員。特技はラテ・アート。じつは相馬のことが・・・?
相馬→ワグナリアの数少ない常連。佐藤のことが気に掛かっている。





最近お気に入りの喫茶店がある。
比較的大きい道路に面しているのに、いつも人が少なく、静かな喫茶店。
カフェ【ワグナリア】
そこが今の、俺のお気に入り。

自動ドアが開くと、取り付けられたドアベルがちりんと鳴った。
「こんにちわ」
「いらっしゃいませ!」
どん、と扉を開くと同時に誰かが俺に飛びついてくる。
「………こんにちわ、山田さん」
「はい!山田です!」
にこにこと俺の視線の下で微笑む女の子。
ここのホールスタッフの山田さん(偽名)だ。
俺がここに始めて訪れたときから妙に懐かれてしまっている。
そしてお決まりのように……
「相馬さん!山田のお兄ちゃんになってください!!」
「お断りします!」
と、会話が続く。
もう何回も同じ会話を交わしたというのに山田さんはまったくあきらめようとはしない…
ちょっと、頭痛くなってきたかも………
「こら、葵ちゃん!」
「八千代さん…!!」
開いてるのか閉じているのかわからない目をしたもう一人のホール担当、轟さんが奥から慌てて飛び出してくる。
うん、これもいつも通り。
「もう…あんまり困らせちゃだめよ?」
めっ!と山田さんを叱る彼女の腰には…………なぜか、日本刀が。
「ごめんなさいね……いつもの席、開いてるから、どうぞ」
にっこりと微笑む彼女は山田さんみたいに俺に何かしてくるわけではないのだが……
読めない思考と、腰の日本刀の所為で何か、苦手だ。
「あ、ありがとう…」
あんまりかかわりあいたくないので一目散にいつものカウンター席へと急いだ。
「こんにちは、杏子さん」
「何だ、またきたのか」
どーんとカウンターの中で堂々と仕事中にパフェを食べている女性、ここの店長の杏子さんだ。
ここまで同道と仕事しないのは、見事だと思うね!
そのまま、定位置になりつつあるカウンターの席に着く。
「まあ、いいじゃないですかー」
「別に私はかまわないしな。お前はアイツ目当てなんだろ?」
「!?」
「おーい佐藤!何時もの奴が来たぞー!」
杏子さんが裏の厨房に向かって叫ぶ。
そんな大きな声で言わないでも!!!!
「うるせえ…そんな大声で言わなくても聞こえてるっつーの……」
「!!!??(来た!)」
かたん、と奥の厨房に続く扉が開き、長身の男性の姿が。
「佐藤君……」
「あー………いらっしゃい……」
無表情に俺を見る彼は、佐藤君。
俺が、いま、一番気になっている人物でも、ある………
彼は普段はめったに厨房から出てくることはないが、こうやって…俺や、ほかの常連さんが来ると奥から出てきて目の前でコーヒーを入れてくれる。
「今日も、お願いね」
「………おう」
そういって佐藤君がコーヒーの機械に向かう。
俺はこういったコーヒーに関する知識はないから、なんともいえないけれど……佐藤君の入れてくれたコーヒーは自分的に一番おいしいと思うんだ。
実を言えば、ここに通うようになるまで、俺はまったくコーヒーが飲めなかったのだ。
うん、詳しい理由を言えば全国のコーヒー好きに喧嘩を売るよな感じだけど……うん、とにかく飲めなかった。
ところが、ちょっとした切っ掛けでここに足を踏み入れて、仕方なしに、コーヒーを飲んだとき(だってここにはコーヒー以外がなかったんだ)初めて、俺はコーヒーを「おいしい」と思った。
それ以来、通い続けてしまっている……。
「何時もので、いいか…?」
「うん、佐藤君のコーヒーおいしいから、何でもいいよ?」
「あっそ…………」
前髪がさらり、と流れる。
綺麗な金髪は後ろ髪だけ赤いゴムでくくられていて、長い前髪は佐藤君の顔の半分を覆い隠してしまっている。
佐藤君、かっこいいのにな……もったいない。
彼は、基本的に口数少なく、無表情な印象で冷たく見られがちだが、そんなことはまったくない。
ここで出される軽食類と、コーヒー、ましてやお菓子類まで彼が作っているなんてどれだけの人が知っているんだろうか。
それに、モカやラテを頼めばかわいらしいラテ・アートまで付いてくる。
……金髪イケメンで、料理できて、特技はラテ・アート………何なの!この人!!
それが、彼に興味を持った切っ掛け。
それから一番彼の姿を見やすいカウンターが俺の特等席になった。
佐藤君の長い指が器用に動いて、カップの中に形が生まれていく。
「ほら、何時ものラテ」
「うん、ありがとう…」
…今日もハート型…
佐藤君は最初のうちは、花やリーフといった様々な形で作ってくれたラテ・アートも、いつからかハート型のシンプルなものしか作ってくれなくなってしまった。
「(ハート型って…一番作りやすそうだし……常連になった俺に毎回何か作るの、めんどくさくなっちゃったのかな………)」
「んだよ……飲まないのか?」
「飲む、飲むよ!」
慌てて佐藤君の手からカップを受け取る。
猫舌な俺に合わせてくれた、ちょっと温めのカフェ・ラッテ。
ハート型を崩さないように、こくり、と一口。
「(うん、今日もおいしい……)」
苦すぎず、甘すぎない、ギリギリのライン。
一言も、俺の味の好みとか話したことないのに……
「おいしい、佐藤君」
「そ………」
それきり佐藤君は押し黙り、カップをもくもくと拭き始める。
基本的に、佐藤君は俺が何か話しかけないと何もしゃべらないことが多い。
でも俺は飽きることなく、カウンターで佐藤君がカップを拭いたり、コーヒーを入れる姿を見ていた。

――――――カラン、カラン・・・・

静かだった空間にドアベルの音が鳴り響く。
「いらっしゃい、ぽぷらちゃん」
「こんにちは!八千代さん!!」
女の子の高い声。
興味本位で見ると、女の子三人組のお客のようだった。
今迄に見たことがない顔だ。
結構、ここのお店に来てると思ったけど……不覚!
一人、ひときわ小さい女の子は轟さんと知り合いなのか親しそうに話をしている。
ふーん……あのこも、常連なんだ……
「あ、さとーさん!こんにちは!」
こちらに気が付いたのか、その子はこっちに近づいて、にこにことかわいらしい笑顔を浮かべている。
でも、佐藤君の表情は変わらず、何も言わない。
あ、あれ?意外に冷たい?
「ああ、種島か」
「うん!今日も来たよ!!」
「…………ちっちゃくて見えなかった」
「!ちっちゃくないよ!!!」
……………前言撤回。
いつもあまり語らない佐藤君が嬉々としてその子をいじっている。
ま、まあ普通の人に比べたら……ちっちゃいね、君……。
「注文は?」
「えっと……ラテ!友達もいるから三人分!」
「はいよ……」
そういって佐藤君はまたコーヒーの機械に向かう。
「お話邪魔しちゃってごめんなさい」
「え?」
その子はそれだけいうと友人たちと奥のボックス席に座った。
一緒の子たちはどうやら佐藤君の姿に夢中らしい。
さっきから、小さくきゃあきゃあと声が聞こえていた。
……何か、気分悪い、かも………
「(佐藤君は、俺のものじゃあないのに、ね……)」
目の前で動く、佐藤君の背中に視線を送る。