二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

School Days 5月 side狩沢

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 


   School Days
Side Karisawa Erika

 五月

 着ている制服にも慣れてきた。ちょっと粋がってる女子ならそろそろいじめを始める時期じゃないかな。もちろん私はそんなことするつもりも無いし、される気もないけど。ただ、それなりの高校生活が送りたいだけ。
 この来神高校の噂の怪物を遠目だけど目の当たりにして、もしかしたらつまらないかもしれない私の学生生活に少し華を添えることが出来たと思う。遠くから見ても分かるあの黒髪の人と金髪の人。まさにBL妄想の種そのものだよね! あぁ、この学校を選んで本当に良かったよ! ゆまっちも受ければ良かったのになあ。
 そんなことを悶々と一人で考えながらたまにニヤニヤと笑顔を浮かべて狩沢絵理華はクラスメイトと昼食をとっていた。

「絵理華・・・・・・ニヤけてるよ。またよからぬ事でも考えてた?」
「よからぬ事なんて失敬な! 立派なBL妄想だよっ!」
「いや、それ“よからぬ事”だと思うよ。十分」
「そうかなぁー。でも、これ私のステータスだしね」
「付き合ってからまだ一ヶ月だけど、凄く良く分かるよ」
「さっすがー。理解が早いね!」
「褒められてるよね? 私」
「うん。褒めてるよ?」
「褒められてこんなに残念な気持ちになったの初めてだよ」
「あはは。冗談」
「いやいや。冗談抜きで」

 狩沢は笑いながらお弁当箱から卵焼きを取り上げ口に放り込む。ちなみに狩沢家の卵焼きには砂糖は一グラムも投入されていない。
 前の席に座って同じ机で食事をとっている彼女は呆れた顔でわざとらしく小さく溜め息を吐き、止めていた食事を再開させた。
 そのまま現代文担当のあの先生は不倫問題で今困っているとか、今の二年生は三年生に対してどんな意味でかは知らないが目を光らせているらしいとか、お弁当を食べながらとりとめの無い話を続けた。

「そういえば、絵理華今日凄く眠そうだよね」
「あー・・・・・・分かる? テンションでごまかしてたんだけど」
「だって目に隈出来てるし」
「あちゃー・・・・・・うん。今すぐにでも私寝れる自信あるよ」

 昨日、というより今日の朝まで狩沢は近日行われるイベントで出す同人誌を完成させるべく戦っていた。昨日、学校が終わったらもはや日課である図書室通いも中止して急いで家に帰り、それから朝の五時までずっと机に向かって同人誌の作成を続けていたのだ。
 一緒に短編小説も載せることになっていたので普段より手間がかかり、しかも期限は間近だったので慌てて作業を進めたのだが、予想以上に時間がかかり気付けば朝日が昇って何時間? という時間になってしまったのだった。
 眠い目を擦り狩沢は窓の外を見る。今なら鳥みたいに飛んでいけそう、と普段の狩沢ならなかなか考えない事まで心の中で呟いてしまう。

 ふと教室がざわざわし始めた。前の席に座る人物が教室の異変の原因をすばやく察知した。

「絵理華! 次、体育だって! 着替えないと!」
「あ、そっか。忘れてた」

 ゆっくりお弁当食べてる場合じゃなかったね、と狩沢はあわてて最後に残ったご飯を口の中に詰め込み、机の横にかけていた体操着入れを抱えて友達と教室から飛び出した。
 最初は走っていたが、食べた直後で二人ともすぐにおなかが痛くなりすぐにゆっくりと歩き始める。更衣室に着き出来るだけすばやく着替えると、靴を履き替えて集合場所である運動場へ向かう。
 春でも真昼は暑く、外に出てすぐ汗が出てきた。

 そして一時間の授業を終え、ゆっくりと昇降口に向かって歩き出す。

「あたし短距離走無理。まだ長距離走の方が得意かも」
「私は運動自体得意じゃないからね。この時間に電撃文庫でも読みたいよ」
「とりあえず、絵理華が文庫を読むってことにあたしは意外性を感じるなぁ」
「えー!? あ、私水飲んでから行くから先行っといて」
「分かった。じゃあ先行っとくね」

 狩沢は昇降口へ向かう道から少しそれた道を歩き始める。昇降口と冷水機は少し離れた場所にあり、ほんの少しだけど遠回りしなければいけない。いくら友達でもそこまで付いてきて貰うのは迷惑だろうと思い一人でそこへ向かった。
 自分に数分後何が起こるかも知らずに。


「あーおいしかった。体育の後の水は特別おいしく感じるなぁ」

 狩沢は喉を潤わせた後に満足そうに口にする。そして着替えなければと昇降口に向かって歩き出すと、突然後ろから肩に手が乗せられ声を掛けられた。

「ねぇ君、通りすがりで悪いんだけどさ。俺の代わりになってね」
「・・・・・・え」

 声を掛けてきた短ランの男子生徒が狩沢の肩から手を離す。離すときに少し肩を押されて、狩沢の体はその力に従うように体が彼の押した方向へ傾く。
するとすぐに背中から体の右側にかけて言葉では表現しきれないほどの衝撃が襲い掛かり、そのまま狩沢は横に数メートル飛び、体に当たった何かが地面に落ちて大きな音を立てたのと同時に地面に叩きつけられた。
 叩きつけられた衝撃でうっ、と小さく唸ると狩沢の視界は真っ暗になった。
 臨也あああああ、という声が頭の中で響きながら。


 目が覚めると、たぶん保健室らしき場所にいた。今ベッドで横になっているのが自分なら、きっとここは保健室に違いない。そう思っての判断である。
 狩沢は前日の寝不足もあり、未だに重い瞼をゆっくりとした動作で瞬きさせ真っ白い教室の風景を見渡す。

「あ、起きた」
「えっ!?」
「どう? 一応手当てしたんだけど、まだ痛いところある? あって普通なんだけどね」

 突然横から声がして驚いてベッドの脇を見る。体を動かした際に鋭い鈍痛がして思わず顔を顰める。あぁ、やっぱり痛いよね。僕だって痛いんだから、と見慣れない男子生徒は読んでいた本をパタンと閉じ脇に置かれている机の上に置くと体の向きを狩沢の方に向けた。
 狩沢は痛みの波が引かない体に鞭打って上半身を起き上がらせ、彼と目を合わせる。

「無理しなくて良いよ。結構近距離で当たったみたいだしね」
「当たった・・・・・・?」
「衝撃的過ぎて覚えてない? 静雄が臨也に向かって投げた冷水機が君に当たったんだよ」
「え・・・・・・ホント?」
「君一年生だよね? 静雄と臨也知らない?」
「いえ・・・・・・あ。”怪物”とか噂されてる・・・・・・」
「それ静雄ね。ただ力が強い馬鹿な奴なだけなんだけど」
「誰が馬鹿だ、新羅」
「あ、静雄。お帰り。荷物持ってきた?」
「おぉ・・・・・・」

 ガラと保健室の扉を開けて何故か私の荷物を持って中に入ってきたのは先日昇降口付近で見かけた金髪の先輩だった。あの、片手でベンチを持ち上げたり、いろいろ物を投げまくっていた先輩。
 そういえば、新羅と呼ばれた人は黒髪と金髪の先輩が険悪な雰囲気のときに間に入って喧嘩を仲裁していた先輩ではないのか、と狩沢は細い記憶の道筋をぐんぐん辿る。
 狩沢がじっと静雄の顔を見ながら考え事をしていると、ふと静雄と目が合った。彼は一瞬たじろいだようであったが、すぐに言葉を発する。

「悪かった」
「え?」
「いや、あのクソノミ蟲に向かって投げた物がお前に当たっちまって・・・・・・」
作品名:School Days 5月 side狩沢 作家名:大奈 朱鳥