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君と僕と僕と僕と僕

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メグルが欲しがっているものと怖がっているもの、が、同じだと気づいたのはいつごろだったろう。
常に欲しがるような素振りを見せて、そのくせ与えられそうになれば冗談のようにはぐらかして逃げた。
メグルはいつだって逃げていた。まるで捕まえてほしいかのように、振り返りながら。
俺はメグルが好きか、でなければ嫌いだった。
メグルに与えようとした。メグルを不幸にか、でなければ幸せにしてやりたかった。無理やりにでも。
「メグル」
俺は呼んで、二歩くらい前を歩いていたメグルは無警戒に振り返った。
「優しくしてあげようか」
メグルは足を止め、表情を変えないまま小さく息を飲んだ。
「お前を好きに、なってあげようか?」
言っている最中に、なんだか唐突にとてつもなく息苦しいような気分になって、俺はいったん目線を落とした。
再び目をあげてメグルを見たときには、もうそんな気分はなくなっていた。
俺はメグルが人から好かれたがっていることを知っていた。
俺はメグルが人から好かれることを怖がっていることを知っていた。
俺はメグルが人から大事にされたがっていることを、けれどいつか捨てられるのを怖がっていることを、
いらないと言われる前に自分から相手を捨ててしまいたがっていることを、それでも、
それでも自分を求めることを諦めない誰かに、愛されたがっていることを知っていた。
メグルはそんな自分を恥じていた。
それを人から指摘されるなど我慢ならないはずだった。上から「してやろうか」なんて口調で言われることも。
メグルは求めていたけれど、探していたけれど、つかもうとしていたけれど、差し出され、与えられることを望んではいなかった。
それを分かっていて俺は言った。見透かされていたことにメグルが傷ついてもいいし、プライドを曲げて俺の手をとってもいいし、
いらない何を言っているんだと突っぱねて、そのあと幾度も「あの時うなずいていれば」と後悔してもいいと思っていた。
そして、メグルが何かを諦めて、その上で俺の言葉に甘んじて、それなりに満足を得てもいいと思っていた。
俺はとにかく、俺の手によってメグルを幸福か不幸にかしたかった。その気持ちをなんと言えばいいのかは分からない。
メグルは、見たことのないような顔で俺を見つめていた。その緊張も動揺も打算も不安も、なぜだか手に取るようにわかった。
作品名:君と僕と僕と僕と僕 作家名:もりなが