骸_錯覚世界7題
2.略奪宣言
ああ、そうですか。あなたはそんなにそれが大切なのですね。笑顔も涙も憤怒も悲哀もすべてを賭けて望むほどに大事なものを抱えて、ふらふらと頼りない足で歩いている。どんなに重くても、その重さこそが嬉しいというその顔がとても素敵だと思いますよ? 譲れないものを全身で守るあなたは、とても美しい。そんなあなたをとても好もしく思います。
そう、それを愛と呼ぶのでしょうね。きらきらと輝くものは、きっとあなたと世界にとって、とても尊くて、とてもとてもいとおしいもの。
僕は、そんなあなたを見るのがとても好きですよ? いえいえ偽りなどなく。誰だって、美しいものを見るのは好きなものです。美しいと感じるものを好ましく思うものでしょう。好ましいと感じるものを愛する、それはとても自然なことだと思いませんか?
そういう観点で見るのなら、僕はあなたとあなたの世界を愛していると言っていい。喜んでください、これはとてもとても稀なことですから。僕自身驚いていますよ。まさかこの僕がもう一度何かを愛することがあるとは。あまりに久しぶりすぎて、愛する方法を思い出せないくらいに。
さあ、それでは選択の時間です。
そんなあなたから、あなたの愛するすべてを奪うのと。
そんなあなたを、あなたを愛するすべてから奪うのと。
あなたは、どちらの愛し方をお望みでしょうね?