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合わせたら二人の温度

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合わせたら二人の温度




寒い冬の日にとても映えるコタツの上の蜜柑の色のように、
あたたかなオレンジ色をとっぷりと濃くした色が空気を染めていた。

空気を染める、というのは少し変な言葉だが、こうして夕焼けに染まる河原を散歩していると、
どうしても自分を取り巻くこの大気にも色が付いているような気がしてしまうのだ。

自分の住んでいた街にあった川も、こんな都会の中に流れる川も、夕焼けに染まればそれは全て同じに見える。
それは、全ての川が海につながっていることと関係があるのだろうか。
全ての生命が海に帰結するように。
自分の隣を歩く彼は、一体どのように思うかと考えもしたが、このような変な考えを話すのもまた勇気がいることだった。
それにしても、彼は僕のような男と並んで歩いていて、楽しいのだろうか。
少しばかりの皮肉を込めて、質問をしてみた。

「ねぇ、六条さん。」

自分の声に、答える音が響く。

「んー、どうした?帝人。」

「野郎と河原を歩くなんて、楽しいんですか?」

そんな僕の問いに、彼は少しだけ目を丸くして、そうしてすぐに笑った。

「その質問、そっくりそのままお前に返すぜ。俺だって野郎だぞ?」

「僕、は……。」

そうして投げ返された質問に、目を反らして、川の流れを見つめる。
ゆるゆると、川は流れを止めない。
夕焼けのオレンジとも赤ともつかない中間の色は、水面の色に混ざり複雑な色を作り上げる。
きらきらと、夕日に輝く色もあれば、徐々に迫りくる夕闇に塗りつぶされたかのような影も混ざっている。
まるで、自分の今住んでいる街のようだともいえるその様子に、自然と言葉が紡がれた。

「六条さんとだから、楽しいって思えるんだと思います。」

「……随分と率直だなぁ。」

「ダメでしたか?」

唇を綺麗に歪ませて、彼は笑みを形作る。
そうして笑みを貼り付けたままに、ゆるりと首を横に振る。

「積極的なヤツは嫌いじゃないぜ。」

「じゃあ、好きでもないとか?」

「……絡むなぁ。」

「だって。」

「街の中を散歩して、わいわいと騒いで遊びたい女はたくさんいるけど、こうやって河原を一緒に散歩したいって思う野郎は、お前だけだよ。」

反論に被せられたその言葉に、わずかに目を見開き、それからゆっくりとその意味を理解していく。
あぁ、これほどの幸せが、ほかに存在するだろうか。
作品名:合わせたら二人の温度 作家名:るり子