心中日和
言われてやっと、俺のこの高揚は不安ではなく、不安もあるだろうがそれだけではなく、柳生が隣にいることも大きな理由だと気づいたからだ。
そう、怖いというよりは、はしゃいでいる。
死という数時間後のことより、今隣にいるというこの瞬間のほうが大切だ。
俺は、二人で学校を抜け出して電車に乗って、まるでデートだとすら思った。
昼の電車はがらがらだ。
俺たちはこれから電車を乗り継いで乗り継いで、
北の果てで死ぬために隣に座っている。
でもそんなことより、柳生と手をつなぎたい。柳生の体に触りたい。
柳生はどうだろうか。
柳生も、おかしくなるほど、今俺に触りたいのだろうか。
今、こうしてなんでもなく隣におかれた手を、あともう二センチだけずらして、指先を触れ合わせたいと、そう思っているのだろうか。
俺はどきどきしながら、まっすぐに前を向いて座る柳生の横顔を盗み見ている。