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あい?まい?みー?MINE!!

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Episode1. ボランティアをする事になりました。




 大学生、竜ヶ峰帝人がこのボランティアに参加する事となったのは、はっきり言って偶然であった。

 彼は高校進学に際して上京し、結局大学も上京先の池袋、行く行く就職も出来得るならば東京で、と言うか、つい先日、東京での就職も決まり、そう言う訳で1人暮らしを始めて早7年目に突入と言う具合になっていたのだが。
数年前に渋る両親を説得して何とか都会での生活をもぎ取った少年には幾つかの条件が課せられ、その内の1つが"学費以外の金銭の援助は一切しない"、と言うものであった。
つまる所、生活費、交際費、娯楽に掛ける費用諸々はどうにか自分で稼げ、と言う事である。
子供に関心が無い訳ではなく、自らの意思を押し通そうと言うのならばそこに付随する責任や雑事を担って然るべき、と、基本的に自立した子供を育てるべく、不必要な甘さを赦さない家庭であった。
帝人にしてみれば、要所要所は押さえるものの、自分の意思を尊重し、先ずやってみる、その行動を見守ってくれる両親の教育方針に大変好感を抱いており、彼等の主張する所も最もだと思っているので、生活に掛かる費用諸々は当然自分で稼いだし、この件で両親の手を煩わせた事は1度として無かった。
元より体力が無く、体付きも貧相で同年代の平均値を大きく下回ってしまうような運動能力故に、決して不器用でもドジな訳でも無いのだが、彼が肉体労働やその他外でアルバイトをする事は無く、彼が専ら手を出していたのはネットビジネスであり、頭の回転や物事の処理に長けていた事もあって、彼は困るどころか不必要な程に稼ぎを入れる事が出来たのだった。

 さて、以上の理由により、勉学に割く時間はさて置いて割合と時間を持て余している竜ヶ峰帝人に目を付けた友人が声を掛けて来た事が、そもそもの始まりだった。
彼は帝人と同じ学部、学科、その上ゼミも一緒と言う具合で、格別仲が良い、と言う事もないのだが、世間話やちょっとした事でつるむ程度には気心の知れた友人である。
その彼は、帝人にこう声を掛けたのだ。

「竜ヶ峰、お前、割と時間あるって前、言ってたよな?そんじゃあさ、俺と一緒にボランティアしねぇ?」

唐突に肩を組んで来た友人に驚いている間に零された言葉に、帝人は何か裏があるのではないかと一瞬怪訝も顕わな顔をした。

「…ボランティア?」

「そっ。あぁ、肉体労働系とかじゃねぇから安心しろよ。お前にそんな話は振らねぇし!」

お前のその体力の無さじゃあなぁ、と苦笑しながら言う彼に帝人が余計な世話だと返して、「具体的にはどう言う内容なの?」、と問うた。

「ん?そうだなぁ…人助けの仕事?まっ、お前なら心配いらねぇよ。」

思い切りはぐらかして詳細を割ろうとしないながら、友人は帝人にどうするかと訊ねてくる。
正直な話、胡散臭さ大、である。そもそもこの友人が何を以てして卒業を控えて論文に忙しい時期にボランティアなどと提案してきたのかが知れない。
友人の方も幸い就職先が決まっているようだから、内申対策等の打算は見受けられない。と、思う。
瞬間、丁重にお断り、と言う方向に向かい掛けた思考だが、しかし、実際に帝人が時間の使い方に惑っていたのは事実であるし、また帝人は非日常に対して類稀なる探究心を有していたので、今の変わり映えしない生活に少しでも新風を持ち込めるかもしれない、と言う、一縷の希望が胸に過ってしまった。
そうなれば、帝人が返す言葉は1つしかない。

「うん、分かった。僕もやるよ。」



 そしてボランティア当日、帝人は彼の言葉に簡単に踊らされた自分を、酷く後悔する事になる。

 指定された日時、場所に赴いた帝人は、幾ら待てども来ない友人に焦れ、メールを送信してみた。
だが、返信されてきた内容は、あまり怒りを顕わにしない帝人の額に青筋を立てる程のものだった。

『悪いな!俺、参加出来なくなっちまったんだ!
 先方にはお前の事は連絡してあるから、以下に書かれてる場所まで1人で行ってくれ。
 大丈夫、お前なら出来るさ!!Good Luck!!!』

初めから彼は、帝人1人に行かせるつもりだったのだろう。体よく押し付けられたのだ。
今度のゼミであったら一発殴らせて貰おう、と帝人は溜まった苛立ちをどうにか溜息を漏らす事で押し留め、重しの付いたように鈍い足取りで目的の場所へと向かった。

 帝人はその場に立ち、本当に此処で合っているのかと、暫し呆けて眼前の建物を見上げた。
年月の長さを感じさせるように所々変色した白い壁に覆われた、広大な面積を取る建物。
其処彼処から聞こえてくる音は、未だ幼さを残す子供特有の高めの声であったり、部活動に精を出す器具の音であったり、建物の中からは楽器の少しズレた音色もある。
どっしりと構えられた門からは同様の服装を纏った(とは言え、聊か着崩した者もいたが)子供達が列を為して帰宅して行く。その門には、しかと"○○中学校"と書かれていた。
もう時効だろう、と今回のボランティアの内容を問うメールを送った所、『中学生に勉強を教える、謂わば家庭教師のボランティア』である事が彼からの返信によって判明した。
しかしながらこれからどうすれば良いのだろうか、と帝人が途方に暮れて立ち尽くしていると、奥の校舎から、スーツ姿の男性が此方に向かってくるのが見えた。

「どうも、本日はお越し頂き誠に有難う御座います。竜ヶ峰…えぇと、失礼ですが、お名前は何と御読みすれば良いでしょう?」

「あっ、はい。初めまして、竜ヶ峰帝人と言います。」

「あぁ、"みかど"君で宜しいのですね。初めまして。改めまして、私この学校の教員を務めております、こう言う者です。」

そう言って差し出された名刺を帝人は丁寧に受け取り、サッと目を通した。3学年の学年主任のようである。

「この度は、学習会の指導員としてボランティアに参加して下さるとの事で、こちらとしては大変感謝しております。」

「あの、済みません。申し上げ難いのですが、僕、このボランティアに関して実は、友人からの又聞きでして、詳細を知らないまま来てしまっているのです。具体的に何をしたら良いのか、教えて頂けませんか?」

どうぞと促されて校内へと足を差し向ける。
失礼な質問かと思ったのだが、初老を思わせる教諭は柔和な態度で、始終物腰柔らかく、帝人の疑問に丁寧に答えてくれた。
曰く、普段している授業とは別に、学習に遅れが見られる生徒を対象として、放課後の学習会を開くと言うことらしい。
のだが、如何せん充てられる教員の数が足りず、止むを得なく、近隣の大学から学生に呼び掛け、ボランティアとして生徒の学習を補助する役目を果たして貰いたい、と言う事なのだそうだ。
担当する教科も英語と数学だけで良いようで、中学時代の記憶など彼方に忘却してはいるが、簡単な計算や英文程度なら恐らくなんとかなるだろうと帝人は少し安堵した。
だが、学習会が行われる教室が近付くにつれ、教諭の顔色が徐々に青くなっていく。何事かと、帝人が横目で見遣ると、心得た様にある教室の前でピタリと歩みを止めた。