未定
しかもこの国自身だという人間は、運命の悪戯か何か知らないが自分と一緒に住んでいる。
(世の中、理屈で説明出来ないことってあるのね)
母は一体、どうやって彼と知り合い、そして友達にまでなったのだろうか。
自分の身内ながら、やはり母は常識とちょっとかけ離れている。そんな気がする。
新入生より少し早めの新学期が、始まった。
移動された靴箱、教室、そして変わるクラスメイトと担任。
琴音は掲示されているクラス分け表を頼りに、靴箱、そして教室へと向かった。
てくてくと廊下を歩いていると、背後からポンと肩に手を置かれる。
「?」
ふい、と後ろを振り返る。
「おはよ!琴音」
その先には、顔なじみの友人が朝から眩しい笑顔で立っていた。
「あ、おはよう。まひる」
「ねえねえ琴音!私達、またクラス一緒だったよ〜!」
「うん、見た。また宜しくね」
「千朝と夕菜も、また同じクラスだし。マジで、今年は最高の1年になりそうだよ」
「そうだね。もう最後の1年だし」
朝っぱらから高いテンションの友人、まひる。
そして、千朝と夕菜とは琴音の高校に入ってからの友人である。
この4人は不思議な縁で繋がっているようで、3年間同じクラスだ。
ふと、琴音は朝の出来事を思い出した。
「あ、まひる」
「ん?」
「今日、遊び行く予定……あったけ。ほら、昼から」
「今日は無しになったじゃん。千朝が午後から、部活の練習試合あるって言ってさ」
「そうだっけ」
「そうだよ。もお、琴音はマジで忘れっぽいね、そういうとこ!」
友人からの眉をひそめた鋭い指摘に、琴音は居心地が悪くなる。
「ごめんって。じゃあまた計画立てようか。今週の土日か来週あたり」
「あ、うん!賛成さんせ〜!」
そうこう会話をしているうちに、新しい教室へとたどり着いた。
昨年度の卒業生が使っていた、3年生の教室だ。
ガラリとドアを開けると、綺麗に並べられた机が朝日に照らされていた。
席は、年度始めということで出席番号順だろう。
机の上には、自分の新しい学年が記された名札が置いてある。
まひるは嬉しそうに自分の机に座り、琴音も後に続いた。
「…………」
すうっと息を吸い込んでみた。
この真新しい空間に漂う、とても新鮮みを帯びた空気を。
これから始まる、ちょっとした非日常に期待して。