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えびせんべい
えびせんべい
novelistID. 17984
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未定01

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「今年は3年生のみんなにとって、大変な年になると思う。

 けれど、得るものも大きいと考えている。最後の高校生活を楽しめるよう、

 先生はみんなを応援する。えー、それじゃあ、HRは終了!」


新しい担任の教師が、にこりと言い放って教壇から降りる。
机に座っていた生徒達は、一斉にがやがやと解散する。

ちらりと壁にかかっている時計を見ると、12時をちょっと過ぎていた。
どうりでお腹が減るわけだ。

「琴音」

自分の前の席に座っていた友人、夕菜がこちらを向いた。

「?」

「お昼ご飯、どうするの?」

「うーん、私はちょっと予定があって」


それを横で聞いていた千朝が、ひょっと二人の間に顔を出した。


「あら?琴音が用事なんて珍しいわね」

「え、そう?ご飯食べに行かなきゃいけないんだ」

「誰と?お母さん?」

「や、違う。お爺さん」

「おじいちゃん?琴音おじいちゃん居たっけ?」

「あー、違うの。その、……アレ、親戚……うん、親戚のヒト」


3人で話していると、紙パックのジュースを飲みながらまひるがやってきた。


「めっちゃ怪しいんですけど〜。もしかして、援交?」


琴音は深くため息をついて、ニヤけるまひるの頭をばしっと叩いた。

「いひゃい!」

「んなワケないじゃん。……あ、そろそろ行かなきゃ」

がたりと席を立った琴音は、机上に置いていたバッグを掴んだ。

「そうだ、私も急がないと」

つられるように、千朝も急ぎだす。

「ああ、千朝、今日は練習試合だっけ。頑張ってね」

「うん、ありがと。じゃあ、また明日ね」

「ばいばい」

ゆっくりとしている予定が無い組のまひると夕菜を置いて、琴音と千朝は教室を小走りに出て行った。


ぱたぱたと廊下を千朝と走っていると、ふと彼女が不安そうに声をかけた。


「琴音、今日大丈夫なの?親戚なんて珍しいじゃない」

「大丈夫だよ、多分。悪い人ではなさそうだし」

「……そう、まあ事情は後で話してもらうわね」

「……うん。じゃあ、まあ、うん……。そのうち」

「一人で抱え込まないでよ。じゃあ、またね」

「わかった。ばいばい」


千朝は、なかなか人の核心をついてくる。いつもそうだ。
家のことは、隠すことでもないしそのうち3人にも話そうと思った。
ただし、説明がほんのちょっとだけ、面倒臭い。


下駄箱で靴を履き替えて外に出ると、来場者用駐車場に黒い高級車が停まっていた。
まさかとは思うが、もしやあれが日本が乗っている車だろうか。
見慣れない高級車に、下校中の生徒達も注目している。

自分の予想が外れていますように、と小さく願いながら琴音は駐車場へと歩いていく。
あの車の側を通り過ぎようとした時、ふいに車のドアが開いた。

「え」

「あ、琴音さん。こちらです」

中から渋い色の着物を着た老人―日本なのだが―が出て、琴音を後部座席の中へと促す。

「あ、え……」

周りの生徒の注目が、自分と日本に集まる。とても耐えられたものではない。
校舎の方からも嫌な視線を感じ、そちらのほうを振り向く。

「う、うわあ……」

窓からこちらを覗いている、まひると夕菜と目が合ってしまった。
反射的に、ぶんぶんと首を横に振る。何に対しての否定なのか、琴音自身もよく分かっていない。

「琴音さん、どうされました?」

「あ、いや、別に」

二人の誤解は後で解くとして、一刻もこの場から消えたかった。
日本は不思議そうにしつつも、反対側のドアから後部座席へと乗った。
琴音も反対側から同じように、そそくさと車へ乗り込む。


そして、車はゆっくりと発進した。




学校から車が離れると、琴音は安堵のため息を吐いた。
ついでに、ふかふかのシートへともたれかかる。

「琴音さん、お昼は何が良いですか?」

「……何でも良いよ」

「ふむ、そうですか……。では桂さん、あの料亭へ」

運転手は短くハイと返事をして、ちらりとルームミラーを見た。
"料亭"と聞くと、何だか高そうな気がして少し不安になる。
自分の財布にそんな大金が入っていただろうか、と。

そんなことを考えていると、日本が窓から風景を見ながら話しかけてきた。

「琴音さん、新しいクラスはどうでしたか?」

(どうって聞かれてもな……)

彼なりに苦心しながら、沈黙を破ろうとしたのだろう。
私ごときに空気を読まなくても良いのに、と思った。

「楽しいよ、普通に」

「そうですか。それは良かった」

「うん」

それっぽっちで会話が止まってしまい、再び沈黙が流れる。
運転手の桂という男がそれを気にしたのか、そっとラジオをつける。
控えめな音量のラジオを聞き流しながら、私は彼への疑問を思い出した。



「あ、ねえ、日本」

「はい、何でしょうか?」

「お母さんとはどういう感じで知り合ったの?」

「琴音さんのお母様ですか?」

「そうだけど」


"お母さん"という単語を出した途端、桂のハンドルを握る手がピクリと動いた。
彼も何か知っているのだろうか。それにしても、変な反応である。
運転手を観察していると、日本がどこか遠くを見通しながらゆっくりと答えだす。


「彼女とは、仕事仲間でした。

 海外の会議や会談で、通訳兼秘書としてよく助けてもらっていました。
 
 いや彼女と仕事の時は、いつも飲みに連れて行かされたものです。

 あ……今は別件で、海外出張をされてましたね」


「そっか」

(国と飲みに行くなんて、やっぱお母さん変だ)


「八重さん……いえ、あなたのお母さんからは何も聞いてないのですか?」


(八重さん?)

「うん、何も。引越しなさいって手紙が来ただけ」

簡単に事情を話すと、日本は口元を隠しながら静かに笑った。


「それはそれは。なんともあの方らしい、と言いますか」

「……?」

「いや失礼。決してあなたの母上を貶しているわけではないのです」


ひとしきり満足に笑ったあと、日本はゆっくりと目を伏せて黙ってしまった。
寝ているようでもないし、何だろうとは思ったが、自分も黙って景色を眺めた。

桜吹雪は相変わらず綺麗で、車道の端に薄桃色の絨毯が敷かれているようだ。


やっぱり、よく分からない。この"日本"という男。











さっそく二人は料亭につき、昼食を食べている。

(すごく美味しい。けど、ぶっちゃけハンバーグとかが良い)

あまり食べなれていない和食に、琴音は気落ちしつつも箸を動かしていた。
昼食を"何でも良い"と言ってしまった手前、文句は言えないだろう。
ちらりと対面して座っている日本をみると、とても幸せそうに刺身を頬張っていた。
あまり感情を顔に出さない彼の、意外な一面である。

「日本。今週の予定って何?」

「あ、そうでした!私としたことが」

このままでは、いつまで経っても彼が話を切り出しそうにないので、痺れを切らしてしまった。


「今週の金曜日、世界会議という各国が集まる会議がわが国であるのですが……

 その会議後、みなで花見をしよう!ということになりまして。

 是非、琴音さんもご参加頂きたいのです」

作品名:未定01 作家名:えびせんべい