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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記8

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「いつ見ても異様な光景だね・・・」
神奈子は里の家々を見まわしながら呟いた。
「そお?僕はこれ嫌いじゃないけど」
「私はちょっと慣れません」
早苗も神奈子同様微妙な顔であたりを見ている。そうしているうちに里の天狗たちが神奈子たちに気付いた。
「おぉ!八坂様だ!」
「あっ、洩矢様だ!」
「八坂様、ようこそいらっしゃいました!」
「今日はどうされたのですか?」
あっという間に神奈子たちの周りに天狗だかり(笑)ができてしまった。
神奈子たちは幻想郷で再出発するにあたり、テーマとして『親しみやすい神様』というものを掲げ、それに沿って活動をしてきた。その甲斐あってか、妖怪の山では絶大な信仰を得ていた。無論、全て人外だが。当初神奈子は人間の里の方まで信仰を集めようと手を伸ばそうとしたが、既に信仰を集めることに執着していなかった諏訪子の
「いい加減もう十分でしょ、山の子たちに好かれているだけで」
という言葉に倣った。天狗たちに好かれている神奈子たちは、天狗の里に来るといつもこういう状況になる。
「八坂様、また大宴会でも開きましょうよ」
「そうだね、また皆で大騒ぎするのも悪くないね」
「東風谷様、いつぞやは息子の病気を治していただき本当にありがとうございます」
「いえいえ、困った時はお互い様です」
「洩矢様、家の娘がまた諏訪子様と遊びたいと申しております」
「うん、大歓迎だよ。今日は用事があるから無理だけど、また今度ね」
とても親しみやすい方達だ。神としてどうなのかは置いておいて。この光景を、青蛙神は感心するような、それでいて悲しそうな顔で見ていた。自分も大昔は同じように話をしたり、楽しく騒いだりしていたものだ。それも人間とだ。本来神様と信仰者との関係はこうあるべきなのだ。必要以上に奉られ、畏敬されることもないし、必要以上に傅(かしず)き、諂(へつら)うこともない。尤も、それ以前に人間が神様から離れて行ったことに問題があるのだが。神界での暗黙の掟上、あまり人間に神徳を与えることができなかった顕界では、それが原因で恩恵の少ない信仰よりも、恩恵の大きい科学を大事にしていこうという考え方が主流になっていった。その末路が冒頭で語った出来事である。青蛙神はもしかしたらこの幻想郷だったら、あの全てが充実していた時間を取り戻せるかもしれないと思った。そしてそれと同時に、かつての相棒の娘のことも思い出していた。
(あの娘もこっちに来ることができたら、もしかしたら幸せになれるかもしれん。今のむこうの状態では間違いなく幸福は掴めない。ただでさえ人外には暮らしにくくなってしまっているのに、人間が神様の真似事をするようになった様な世界では、存在すら危ういじゃろう。なんとかしてこっちに呼びよせることはできないものか・・・)
青蛙神は自分がそうであったように、スキマ妖怪八雲 紫にお願いして、連れてきてもらうことはできないだろうかと考えた。しかし、幻想郷に来たばかりの自分がそんな勝手なお願いをするのも憚られる。今の自分にはどうにもできない。青蛙神は自分の非力さを呪うと同時に、改めてまだ直接会ったこともない八雲 紫の能力を羨ましく思った。
「はいはい皆さんそこまで。今日八坂様たちは天魔様に用事があってこちらに来られたのです。今も待たせてしまっていますので、お話は次の機会にしてください 」
放っておいたら収集が付かなくなりそうなので、文がこの場をお開きにしようとした。
「あっ、文ちょっと待って。そう言えばみんなにお土産を持って来たんだ。早苗っ」
「はい」
神奈子に呼ばれて早苗は大きな荷車を集まっている天狗たちの前まで引いてきた。
「これはあたしと諏訪子からの振る舞い酒とお粥だよ。ちゃんと全員にいきわたる量があるから。そうだね・・・椛っ」
「はいっ!」
それまで必要以上に前に出ず控えていた椛が神奈子に呼ばれて傍まで近づいてきた。
「早苗と一緒にこの酒とお粥を皆に配っておいてくれよ。その間にあたしと諏訪子は用事を済ませてくるから。やり方はお前に任せる。多分体が不自由で家から出られない子たちもいるだろうから、そういうことにも注意して、ちゃんと里の皆に配るんだ。これくらいできるよな?」

ここで改めて狗賓について説明しておこう。天狗社会において狗賓は身分としては最下位である。狗賓意外の古い考えを持つ天狗の中には 狗賓を見下しているような連中も多い。それを表立って公言している奴はさすがに少ないが、狗賓意外の天狗の殆どが心の中では、(狗賓に指図されたくない。狗賓が偉そうにするな)という感情を少なからず持っている。公言している連中は口に出して言っているので、解りやすい分ある意味割り切りやすいが、口に出さない連中は表情に出ている奴も多い。こちらの方がたちが悪い。御影の呼びかけのおかげでそういった傾向も弱まりつつあるのだが、ここで狗賓の小娘である椛が狗賓衆筆頭についたので、またこの問題が浮上した。美理の目下の心配事である。しかもこの椛はかなり複雑な過去を持っている。どういった過去かは後述するが、このことが他の天狗たちに与えている影響も大きい。総じて、椛に対する周りの反応は、中々に深刻なものなのである。勿論文を始め、少ないが理解者もちゃんといる。むしろ天魔とその側近である美理からは大きく評価され、信頼されている。それも他の天狗たちにとっては面白くないことなのだろうが。