【東方】東方遊神記8
「ところで、文はまたって言ってたけど、にとりがどうかしたの?」
謁見の広間入口の大襖に耳を当てながら、諏訪子が文に訊いた。・・・それにしても・・・外見はさておき、いい年をした女性が四人もそろって盗み聞きをしている光景は・・・なんとも間抜けである。
「えぇ、実は、ここ最近にとりはあることを認めてもらいたくて、定期的に、しかも短い間隔で天魔様に会いに来るんですよ 」
初代と違って御影は自分に会いにくる者がいれば、時間の許す限り誰とでも会い、話を聞くようにしている。それこそ、人間が会いに来てもいいと思っているのだ。もっとも、人間が天魔に会いに来たことは一度も無いが。そもそも人間だけで妖怪の山に入るのはかなり危険なことである。しかしこれは前述した御影の政治方針の表れの一つである。
「あること?」
「はい。先日、お二人が起こした間欠泉騒ぎがあったじゃないですか。それで、例によって霊夢さんと魔理沙さんが地底調査を行ったんですけど。私は霊夢さんについて行ったんですが、にとりも魔理沙さんについて行って、地底調査に参加してたんですよ。まぁ実際は私もにとりも直接地底には行っていないんですけど、行きたくなかったし。で、お二人が河童の技術者たちと密かに進めていた・・・なんでしたっけ?エネルギー産業革命?その主軸となる核融合エネルギーを、映像ごしですがにとりが実際に見てみて、衝撃を覚えたんですって。これは今使っている電気エネルギーの何百倍も凄いものだって。まぁ私としては眉唾(まゆつば)ものだなというのが正直な感想ですが。私も見ましたけど、ただの炎だし」
確かにすごい熱量でしたけどね、と一応フォローめいたものを入れつつ、文は話を続けた。盗み聞きしようと言っておきながら、三人は三人で話し始めてしまっている。青蛙神は幻想郷に来たばかりなので、当然ここで起こった事件は何も知らない。神社でこの二人の神様が何かをやらかしたというのは少し言っていたが。今三人が話している内容は聞いてても意味がないだろうし、後で部屋の中の会話内容を教えてあげようと思い、青蛙神はにとりと天魔の会話を真剣に聞くことにした。盗み聞きで(笑)。
「で、こんな凄いエネルギーを使わない手は無いって言って、間欠泉騒ぎが解決した後すぐに、天魔様に灼熱地獄跡地の核融合炉の研究の続行と、行く行くは核融合エネルギーの利用を許可してほしいとお願いに来ている、というわけです」
「へぇ・・・僕たちは霊夢にこっぴどく叱られて、早々に手を引いちゃったけど、にとりはまだあのエネルギーの実用化に向けて頑張ってるんだ。さすがは河童の村随一の技術屋だね」
「確かにあの娘なら、青蛙神が言ってた顕界の人間のように、間違った、愚かな使い方は絶対しないだろうしね。まぁでも仮に御影の許しを得られたとしても、問題はあのおバカっ娘の鴉がちゃんと協力してくれるかってところだね」
「それよりももっと前に、あのお空の飼い主が地上の者に協力するかどうかですよ」
「それは大丈夫でしょ。なんか霊夢や魔理沙と弾幕ごっこをした奴らは皆性格が丸くなるみたいだし。神奈子も含めて」
「それはあれかい?霊夢たちにやられる前のあたしはとんがってたとでも言いたいのかい?」
「自覚がなかったとか(笑)・・・本当に終わってるね❤お父さん」
「ほほう・・・いい度胸だ。久々にお灸をすえてやろうか?」
「ちょっと二人とも、あんまり騒がないでください。中にばれてしまいます」
これも二人のいつものじゃれあいなのだろうか。ちょっと本気が見え隠れしているようだが。
作品名:【東方】東方遊神記8 作家名:マルナ・シアス