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池袋最強が負けた日

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池袋最強が負けた日

「対シズちゃん用人型決戦兵器“サイケデリックドリームス2”―――起動♪」
真っ暗な広い部屋にぼうっとパソコン画面の青白い光が灯り、臨也の妖しい笑みを浮かびあがらせる。
「さあ、シズちゃんと心ゆくまでやりあっておいで―――」



サンシャイン通りを流れる人の波。それをビルの屋上から俯瞰する、一人の男がいた。
真上から見下ろすと人の頭がごちゃごちゃと入り乱れる様子がよく見える。
「ノイズのひでぇ街だなぁ。フン……悪くねぇ」
金髪に白いスーツのその男は、ビルの際に立ち腰を曲げて下を覗き込んだ。重心の安定しないその身体はゆらりと揺れ、今にも落ちてしまいそうだ。どこにピントが合っているのかわからないその眼は人の不安を誘う。
首にひっかけていたピンクのヘッドホンを耳に装着すると恍惚とした表情で目を閉じた。
耳元から流れる音楽に身体でリズムを取りながら、屋上の際をふらふらと歩く。
5,6歩歩いたところでゆらゆらと重心の定まらなかった身体がピタッと静止した。
そして急に表情が消えたかと思うとカッと目を見開き思いっきり口元をゆがめて
「ぎゃはっ!来たぜぇぇぇ!いけぶくろおおおおお!」
叫びながら背中を弓なりにしならせて、そのまま空中に身を投げた。
ひゅう、と風を切ってビルの屋上からサンシャイン通りへと落ちる身体。
「おおおおおおおおおおお!!!!!」
落下しているコンマ数秒の間で態勢を立て直し、足から着地する。
バネのようにしなやかに膝をまげて衝撃を吸収する。
その衝撃の強さは並の人間に耐えられるようなしろものではなかったが、この規格外の男に関しては例外だった。
勢いで地面に少し足がめり込んだが、身体が傾ぐこともなくゆっくりと立ち上がる。
突然空から降ってわいた白い男に、通りを歩いていた人間が一斉に空間を空けた。
男はゆっくりと顔を上げて周囲を見渡した。
瞳孔の開ききったその眼は視線で人を殺せそうだ。

作品名:池袋最強が負けた日 作家名:みぞれ