麻多さん家の家庭事情
母は、私と兄を産んで殺された。
正確には、産みの母が、死んだ。
確かに私は血も遺伝子も、今母と呼んでいる人から受け継いだものだ。
しかし、母は幼すぎた。否、弱すぎたのだ。
当時母は15歳。父は、幼く穢れのない少女を孕ませたのだ。
その為出産ができるかどうか危うかった為か代理出産、という手段を父は選んだ。
母は何も知らず、痛みすらを感じずに私を産んだと今でも思っている哀しい人だ。
代理出産の母として父が選んだのは父が気に入った侍女だった。
誰でも良かったのではないのか、と言われればおそらくそうだ。
父は女好きで母も元々は芸者。父が気に入って母を買い取り、妻にした。それだけ。
それでも父の女好きの血は止まらずに侍女を食っていったという話がある。
いつの時代の大奥だ、と言われれば現代の大奥なのかもしれない。
間違いなのは…侍女はそんなにおらず、そんなにがめつくないという所くらい。
そして母は胎内受精をし、受精卵を代理出産の母へと移し産みの母だけが苦しんだ。
その時の待遇は良かったのだろうか、と考えれば私達がどれ程期待されていたのだろうかと考えはつく。
しかし。
産まれてきた赤子は双子で。狭い子宮口を2人同時に出てきて。
体はバラバラだった。
誰もが悲鳴をあげ、すぐに試験官の中へと入れられた。
意味は違うが、私達は試験官ベビーということだ。
赤子としてではなく、一人の人間として縫合された。
そんなことができるのか、とかそういうことは最早疑問する所ではない。
キチガイの麻多の家だからこそ、できる荒業。
それを知ったのは、最大のキチガイである兄なのだから真偽かどうかはわからない。問うべきことではない。
ただわかることは、自分の体が、違う体であると思うことが確かである。
作品名:麻多さん家の家庭事情 作家名:むいこ