二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

さよなら天国、また来て地獄・2

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 



「とりあえず入籍しましょう」
「させません」
「仕方がないですね」
「子供が産まれてからじゃダメなのか?」
「どっちにしろないって。帝人君は俺と結婚するし」
 朝食の席での話とは思えない話題を堂々と口にする沙樹を咎めることもない男三人。
「学生結婚か・・・・・・」
「大丈夫幸せにしてくれるよ、正臣が」
「え」
「私と子供を帝人に幸せにしてもらって正臣が帝人を幸せにする幸せ家族計画」
「ちょっと違うような・・・・・・あ、あしながおじさん拗ねないでください」
 自分で作った黒胡椒のきいたチーズオムレツを面白くなさそうに食べている臨也に帝人が声をかける。
「俺は帝人君と子育てしたかった」
「臨也さんに人を育てるなど無謀極まりないことをどうして挑戦しようとするんですか? 途中で飽きたとか言おうものなら社会的じゃなく物理的に抹殺しますよ」
「帝人君が半分居るんだと思えば飽きることはないよ。その点だけは確信してる」
「らぶらぶですね」
 沙樹の言葉に「当然だよ」と臨也は返す。
「どうでもいいですけど正臣に八つ当たりしないでください。見苦しい男ですね」
 臨也の指先に帝人はナイフを突き刺す。
 テーブルの下で響いていた音が止まる。臨也がずっと正臣を蹴っていたのだ。
 その身に帝人の子を宿す沙樹に臨也が敵意を向けることはないが連れ添いである正臣は別だ。
「帝人君と一緒のベッドに寝るとか俺でも数えるぐらいしか」
「数えないでくださいよ」
 二人が肌を重ねたところで帝人が「床で寝てください」と臨也をベッドから追い出すのははじめの頃から変わらない。帝人が目覚めた時に一睡もせずにひたすら見てくる臨也に鳥肌が立てて以来ずっとだ。
「羨ましい妬ましい憎らしい」
「人生楽しそうですね」
 帝人は笑ってポテトサラダを口にする。
「式はあげたい?」
「正臣、どうしたい?」
 二人から見つめられて戸惑う正臣。俺が答えることなのかソレ、という意識が強い。どうにも夢心地。
「現実だよ」
「・・・・・・さいあくだ」
 頭を抱える親友に帝人は臨也に目を向ける。
 面白くなさそうな顔のまま臨也は「男でもマリッジブルーや育児ノイローゼになるからねえ」とコンソメスープを飲む。
 帝人と沙樹から同じようなあたたかなまなざしで見つめられ居心地の悪さが増す正臣を臨也は嘲る。
「とりあえず入籍とかダメダメ帝人君は俺の」
「それはそれとして籍を入れるのは誕生日?」
「覚えやすいのがいいね」
 臨也の意見をばっさり無視して帝人は沙樹にたずねる。
 頷きながら楽しそうに二人は話を詰めていく。
 置き去りにされた男二人はこれといって同族意識など持たず別方向を向く。
「あみだ」
 臨也がぽつりと言う。
「あみだくじしよう」
 食べ終わっている皿を重ねてテーブルを片づける折原臨也。思い立ったら行動は早い。
 電話近くにおいてあるメモ帳を手に「あみだくじ」ともう一回繰り返す。
 臨也は縦に四本線を引き、下に四人の名前を書き折り曲げて帝人に渡す。
「え、っと」
「私と正臣の名前、書いていいよ」
 沙樹が正臣の分も承諾をする。正臣は何か言いたげに口を開閉するものの「ああ、まあ」と視線を下げる。
 昨日から衝撃続きで元気のない親友のらしくなさに心配になりながら帝人は適当に四人分の名前を書く。
 帝人は横に何本か線をいれ沙樹に渡す。
 沙樹は一本斜めに引いて正臣に渡す。
 正臣は二本線をいれて帝人へ戻す。
 臨也はそれをただ見ていた。
「自分の名前になったら笑いますね」
「それもいいかもね」
「さあ、パパは誰がなるのでしょう」
 楽しそうに沙樹は笑う。少女の無垢さが恐ろしいと正臣は横で感じた。

「ああああああああぁぁぁぁあああぁあぁあああぁあ」
「叫びすぎです」

 床を転げ回る男を踏みつけて帝人は言う。
 ちなみに見事にちゃんと別々の相手と組み合った。

 正臣と帝人。
 臨也と沙樹。

 沙樹は何も言わないが少し残念そうな表情をした。
 正臣はとりあえず何かを言わないといけない気がして帝人に近寄る。
「その、幸せにするからっ」
「う、うん」
 先ほど沙樹の言葉の通りになったと思いながら正臣が告げれば頬を赤らめて帝人が頷く。
「羨ましい妬ましい憎らしい」
「臨也さん、噛みしめる用のハンカチ」
「決闘用の手袋が欲しい」
「シルクで?」
「シルクで!」
 沙樹に「持ってないです」と言われながらも臨也は勢いよく起きあがる。
 帝人に笑顔で向きなおる。
「考えようによっては親権俺のもの? やったね」
「定職についてない人が何を」
「裁判の間だけちょっと会社勤めするなら頼めばなんとかなるかな。ちょっと所得いくらなら有利か調べるね。そうしよう」
「迷惑かけないでくださいよ」
「後ろ暗いことしてる方が悪いでしょ? ってことで、書類もらいに行こうか、沙樹ちゃん」
「はい、臨也さん」
 歩き出す二人に構うことなく帝人は食器を運ぶ。
 正臣もそれを手伝いながら思ったことをそっと告げる。
「臨也さんのことだからなんか裏でもあるのかと思ったけど」
「あれは細工できないよ」
「だよな」
「そういうところ嫌いじゃない」
 帝人の表情に正臣は「なるほど」と大体すべてを納得した。
 許せるのかは別問題ではあるが。
 二人の仲をここに来てやっと把握して巻き込まれている自分に疑問を抱かずにいられない。