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ゲルマン一家奮闘記 【4話目追加】

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4.思い出はいつも甘酸っぱく

ルートヴィッヒが気づいた時には、放課後の貴重な時間での話し合いは、文化祭の出し物から初恋はいつか?という、何ともくだらない議題へと摩り替わっていた。
「オレはねぇ~幼稚園のときだったよ。すっごくかわいかったんだぁ~」
「ふふ。フェシリアーノ君ったら、おませさんですね」
「オマセサン?ねぇねぇ、菊は?菊は?」
「私ですか。そうですねぇ、いつだったでしょうか」
忘れてしまいました、と惚ける本田に、フェシリアーノはずるい!と頬を膨らませた。
「オレはちゃんと言ったよ!」
「あらあら、そんな顔しても可愛いだけですよ」
ぶうぶうと文句をいうフェシリアーノの頬を、つんとつついて本田は笑う。
それを面白がったフェシリアーノが、仕返しとばかりに本田の頬を引っ張った。
すると本田もフェシリアーノの頬をつまんで引っ張り、互いの顔を見ると、二人してきゃらきゃらと楽しそうな声をたてて笑っている。
その何とも幼稚地味たじゃれあいに、ルートヴィッヒは呆れて溜息をついた。
(こいつ等、16にもなって何をしているんだ・・・)
怒る気にもなれず、下手に声をかけて巻き込まれるのも嫌だったので、少し距離をとって放置することにした。
しかし、そんな友をそっとしておいてくれる友人達ではない。
「ルートさんはいつでした?」
「・・・なにがだ?」
ニヨニヨと気持ち悪い笑みを浮かべて本田が訊ねる。
自分の事は棚に上げるのか、とルートヴィッヒは本田を軽く睨んだがどこ吹く風だ。
「ルーイの初恋だよ。は・つ・こ・い♪」
ちょん、とルートヴィッヒの鼻先に何かが触れた。ばっと振り向けば、フェシリアーノのが満面の笑みでルートヴィッヒの鼻先を押していた。おそらくは、先ほどの本田の真似をしたのだろうが相手が悪かった。
ルートヴィッヒは間髪いれずにその指を叩き落とす。
「ギャッ!」
「俺も憶えていないな」
痛い折れたよ絶対!と泣き叫び転げ回る友を省みることなく、ルートヴィッヒは淡々と答えた。
「エエーッ!ふたりともズルイよ!!」
ただ一人だけ洗い浚い告白することになったフェシリアーノは、ぎゃんぎゃんと喚き続け食い下がったが、残りの二人も忘れた憶えてないの一点張りで押し切ったのだった。

結局、文化祭については何一つ決まらぬまま部室をあとにした。
「ルートさんには、可愛らしい妹さんがいらっしゃいますものね?」
本田はルートをちらりと見上げながら、含み笑いをした。
さきほど部室でしていた話しの続きだとルートヴィッヒにはすぐに分かった。
ついさっきまで、めそめそと泣きべそをかいていたフェシリアーノは、二人の少し前を歩きながら、「ヴェ♪ヴェ♪」と上機嫌でジェラードをなめている。
「・・・お前にだって、いるじゃないか」
眉間に皺を寄せて渋い表情でそう答えれば、本田も同じく渋い表情になり、そうなんですよねえと溜息をついた。

「まさか、初恋が妹だ、なんてねえ?」

どこの変態ですか。と本田は呟いてがっくりと肩を落とした。
その肩をポンポンと慰めて、ルートヴィッヒは決然とした口調で同意した。

「口が裂けても言えん」