二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ゲルマン一家奮闘記 【4話目追加】

INDEX|4ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 


3.上官の命令は絶対である

「あー、腹減ったぜ」
ギルベルトは、シャワーを浴びて濡れたままの髪をタオルで乱雑に拭きながらリビングへと現れた。
香ばしい匂いに鼻をヒクリと動かしてニカリと笑みを浮かべる。
「今日も旨そうだなぁ~」
テーブルに並ぶ朝食に手を擦り合わせ、綺麗に輪切りにされたゆで卵へと手を伸ばしあと少しというところで、パシリと勢いよく叩き落とされてしまった。
「叩くこたぁねえだろ」
「行儀が悪い」
なら手を出す前に口で注意しろと抗議してみたものの、ルートヴィッヒは相手にしない。
さっさと自分の椅子へと腰をおろすと新聞を読みはじめてしまった。
ああ、昔の可愛げはどこへいったのか。何となく物悲しい気分になってしまったギルベルトは、仕方なくつまみ食いは諦めて自分の席につく。
「自業自得である」
「ァア?」
後ろからの声に振り向けば、弟のバッシュがリビングへと入ってくる所だった。
シャワーを浴びた後なのか、首にタオルを引っ掛けている。
この弟とギルベルトは兄弟の中で一番馬が合わない。
「聞いてたのかよ」
「貴様の声が無駄に大きいだけだ」
「手前みたいに小さいよりマシだ」
「先ほどの発言の撤回を要求する!」
テーブルを挟んで睨みあう長男と三男。
聞き苦しい悪言雑言の飛び交う中で、弟は止めるでもなく黙々と新聞を読みふけった。
そこへ、ぬっと現れた大きな影。
それに気づくか気づかないかの内に、三人の脳天を大きな衝撃が襲った。
ゴッ。ゴッ。ゴッ。
「「「ッ!!」」」
声もなく悲鳴をあげて兄弟達はズキズキと頭を押えて身悶える。
ダメージからいち早く回復したルートヴィッヒは「何故俺までっ!」と影=父親に抗議したものの、ちらりと寄こされた視線の鋭さに二の句が告げない。
理不尽だ、暴力反対などと叫んでいた兄達もそれを見て同じく口を閉じた。
「・・・連帯責任だ」
ポツリとこぼれた声は、いつもの変わらぬ平坦な声ではあったが。
その一言で、状況を正しく理解した兄弟達は、一斉に椅子から立ち上がるとビシリと姿勢を正す。
それを見た父親は重々しく一度頷き、息子から取り上げた新聞を広げた。

「どーしてあんにゃたちはたってるの?」
怖い顔をして立っている兄達を、末っ子は不思議そうにじっと見る。
隣で世話を焼いてくれる姉の服を引っ張ってみたが、ただ優しく微笑むだけでなにも答えてはくれない。
「ねえさまもへん」
末っ子はますます気になって「ねえ、なんで?どーして?」と姉にせがんでいると、
「ん、くわっせ」
反対側に座っていた兄が、大好きなヨーグルトをくれた。
「ローちゃん、お兄様にお礼は?」
「あんにゃ、ありがとう!」
姉にうながされて、末っ子は元気よく兄に御礼を言う。
その後はもうブルーベリージャムがたっぷり入ったヨーグルトを、夢中になって食べた。
その末っ子の様子を、兄と姉はもちろん、父親も優しい表情で眺めている。
どこにでもある穏やかな朝の食卓であった。

父親から許しの通達がくるのは果たして何時なのか。
三兄弟は直立不動でその時をただただ待つしかなかった。