世界の終末で、蛇が見る夢。
樹木の生い茂る様は、普通なら癒しになりそうなものが、いわゆる『逢魔が時』という時間も作用したのだろうが、とにかく不気味だ。なんだか禍々しいものが隠れているんじゃないかという感じがする。
それはさておき、通された部屋にも驚いた。お世辞にも『年ごろの女性』に似つかわしくない…あまりにも殺風景な部屋。ひとり暮らしにしては少し広すぎるかなと思う間取り。
落ち着ける室内を模索していった結果らしいのだが、良く言えばシンプル、悪く言えば隔離病棟の一室のような、打ちっぱなしのコンクリートを思わせる壁紙、実用一点張りのベッド。寝具には薄く青みがかった、あるいは緑がかったグレーで統一されていて、正直ちょっと落ち着かない。
唯一、リビングの片隅にある大きなベンジャミンの鉢植えが、その緑の鮮烈さで、砂漠の中に突如として現れたオアシスを見つけたみたいにほっとする。
そのせいか、リビングで話をしているとつい長居してしまう。普通なら男が、女性の部屋に招かれて(しかも夜に!)何時間もお茶とケーキにおしゃべりだなんてあり得ない。女友達だの子供同士でもあるまいし…なのに、何故だが今のところは現実だ。
時々、彼女がぼんやりとこっちを見つめていることがある。視線の先は俺の顔だったり左手だったり、そして目が合うと慌てて伏せる。
…うぬぼれても、いいのだろうか。俺だって平均的に健康な25歳成人男性だ。ただ、経験があまりにも少ないのでこういったときにどうしたらいいのか判らないけれど。…あいつに一度、訊いてみようか。女性のあしらい方の一つや二つや三つくらいは知ってそうだし。
作品名:世界の終末で、蛇が見る夢。 作家名:さねかずら