つめたい手に愛されて。
「君に拒否権はない、そうでしょっ?」
「っ…くそっ…‼」
悔しそうに叫んだ彼に笑いかける。
よく覗き込むと顔色が悪い、早く治療しないととギルベルトに触れると彼はその手を振り払い、身を捩る。
「っ…や」
ぐらりとプロイセンの体が揺らめく。
体を強張らせ、なんとか意識を留めようと重そうな瞼が瞬くが、焦点の定まらない奥の瞳の緋が虚ろになってゆく。
その抵抗も最後までは続くはずも無く、もう一度瞬いたかと思うと糸の切れた人形の様に崩れ落ち、意識を失ったみたいだ。
力の抜けた軽い体が前のめりに倒れこむのを抱き止めた。
とほぼ同時に東ドイツ(プロイセン)の別荘に着いた。
意識を無くした彼を抱き、馬車を降りると着いた別荘の庭に脚を踏み入れる。
「手当てを」と告げながらもこれからの事を考えると、自然と頬が緩み、笑みが広がる。
今日からここは僕のものだ。
ギルベルト、君も早く墜落ちればいい。
この、手の中に。
作品名:つめたい手に愛されて。 作家名:やしろかなえ