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これも一つのシズデレラ

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ある時代のとある城下町に平和島静雄という青年がいました。
静雄には臨也という継母がいましたが、大変仲が悪く、ひとたび会えばそこが家だろうが市場だろうが公園だろうが構わず喧嘩という名の戦争を勃発させるほどです。
そんな静雄は臨也から嫌がらせの一環としてシズデレラと呼ばれていました。

◇◆◇◆◇

「ちょっとシズデレ」
「その名前で呼ぶんじゃねええええ!!!!!」

家具が飛ぶ、ナイフが刺さる、そして高価な壺が舞う。
平和島の家は今日も盛大に長男と継母による戦争が行われていました。とても一人で持ち運べそうにないソファだろうがテーブルだろうがチートな怪力を持つ静雄には関係ありません。軽々と投げられては、それを臨也が避け、高級家具や価値のある骨董品は無残な姿へと変貌してゆきます。

「って何でもかんでも投げないでよね! いくらすると思ってんのこれ!!!」
「うるせえ! んなもんてめえがよけずにおとなしく殺されればいいだけだろうがっ、つーかお前のその格好気持ち悪いんだよ!!!」
「そっちだって人のこと言えるような格好してないくせに! 誰のせいでこんな服着る破目になったと思ってんの!!?」

そう、この日は二人とも女性用のドレスを着ていたのです。正装用でないとはいえ、ひらひらふりふりの。もちろんどちらもそのような趣味は持ち合わせておりません。二人がなぜこのように笑える・・・、ごほん、摩訶不思議な格好をしているのか。それは静雄がこの家にある自分と臨也の服をすべてダメにしてしまったからです。

普段は家事は静雄の実の弟である幽がやっていました。しかし彼は今城下町中で人気を誇る役者であり、また副業として行った事業が成功し、商人としても名を上げていたのです。そんな忙しい弟の手を煩わせてはいけまいと静雄は洗濯ぐらい自分でやろうとしたのですが・・・。
こんなファンタジーな世界に洗濯機という文明の利器などあるはずがありません。服を洗うのも手作業で、力をコントロールできない静雄はことごとく自分の服を破いていってしまいました。
また、洗濯をしている静雄を見つけた臨也の妹である双子の二人、九瑠璃と舞流はこともあろうか臨也の分の洗濯も頼んだのです。それも臨也のすべての服を。
双子に服を差し出された瞬間、静雄は臭いで臨也の服だと判断し、それと同時にそのまとめられた服を全力で空に向かってぶん投げたのです。その時、臨也の服は空の彼方まで飛んでいき、キラーンと光ったそうです。

自分の服がないことに気づきその理由を知った臨也は当然激怒、その日もまた戦争が勃発しました。しかしその争いも落ち着いた頃には二人とも着ていた服はボロボロ、再び着ることはできそうもありませんでした。

そして静雄と臨也はなぜか家にあった自分ぴったりのサイズのドレスを着ることになったという訳です。実は臨也のドレスは九瑠璃と舞流が、静雄のドレスは幽が以前から用意していたものだっりします。三人ともいざというときのために用意していたそうなのすが、そんな成人した男性がドレスを着なければならない状態なんて本気で来ると思ったのでしょうか。
九瑠璃と舞流に関しては兄にドレスを着させるためにわざと静雄に服を渡したようです。

「ああもう! そもそも男なのに継母だなんて肩書き持つようになったもシズちゃんのせいだよね!? それでも俺心広いからシズちゃん死んだら許してあげようとか思ってんだよだから今すぐ絶命しろ!!!」
「ちゃん付けもすんなあああああああ!!!!!!」

臨也はもともと静雄の継母になどなる気はありませんでした。というかなにが悲しくて天敵の継母にならなくてはないけないのでしょうか。しかも男なのに。
本当は平和島家の財産を静雄から横取りて悠々自適に人間観察ライフを送るつもりだったのです。でもそれを察知した静雄は臨也が書類を出すために来ていた役所まで乗り込み大暴れ。その結果、書類がまぎれにまぎれ、臨也は晴れて静雄の継母という肩書を獲得したのでした。

さすが『日ごろの行いって大切だよね!』と見ているだけで気付かせてくれる臨也さん、半端ない自業自得っぷりです。しかしこの場合は臨也という継母(男)を手にした静雄の方がより不憫なのでした。後に涙ながらに幽に謝る静雄を見たとか見ないとか。

臨也も当初は精神的ダメージで寝込んでいたものの、これで平和島家の財産俺のものじゃね!?と無理矢理開き直ったわけですが、一日一回毎日戦争、という状態から家の修理費や新しい家具を買うためのお金など、積りに積って古くから続く平和島家の財産は底をつきかけてました。
一応、静雄も臨也もそれぞれ仕事を持っており人並に暮らす分には不自由しません。成人していない九瑠璃と舞流も幽と同じ家に暮らせる今の生活に大変満足していました。

ですが、静雄のせいでなに一つ思い通りに行かなかった臨也と、臨也を本能的に嫌悪する静雄がこのような生活受け入れるわけもなく、お互いが相手をどうにか始末しようとする毎日が続くのでした。

そんなある日、静雄たちのもとに城から一通の招待状が届けられました。

作品名:これも一つのシズデレラ 作家名:千華