二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

これも一つのシズデレラ

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

『・・・・・・・・どうしたんだその服?』
「え、なにが?」

その招待状を届けに来たセルティは、臨也の姿を見た瞬間『なんだその気色悪い格好は!?』と紙に書いたのですが、思いとどまって書き直し、臨也に問いかけました。

(よかった、私に頭がなくて本当に良かった。でないときっと吐いてた、内臓的なものも一緒に)

そんなことをデュラハンのセルティが思っているとは思いもせず、臨也は届けられた招待状に目を通しながらセルティの疑問を流しました。
先程まで静雄のドレス姿を散々バカにしていた臨也ですが、彼は眉目秀麗なことを自覚しているので自分がなにを着たって似合うと思っているのです。今の姿だって『別に似合ってんじゃん』ぐらいの認識なのでした。なにこいつうざい。

「へえ、城で舞踏会ねえ? 今の王子ってあんまり派手なこと好きじゃなかったけ?」
『王子の結婚相手を探すための舞踏会だからな?』

何かを感じ取ったセルティは臨也に念押ししたものの、臨也は「わかってるわかってる」と手をひらひらさせながら笑って答えました。セルティからして見れば信頼度0%の笑顔です。
家に入って行く臨也を見送った後、セルティは急いで他の招待状を配り終えて城へ向かいました。

(なんだか嫌な予感がする)

というか嫌な予感しかしませんでした。

◇◆◇◆◇

「なんでイザ兄までついてくるのさ?」
「お前らだけじゃ何やらかすか不安だから保護者としてのついて来てやったんじゃないか」
「・・・真・・・?(本当に?)」

当然、実の妹からもまったく信用されていません。

「しかしお前らもよく行く気になったな」
「王子に興味はまったくないわ、狙うは国中から集まった女性たち!」
「・・・共・・・・・・(舞流が行くなら私も一緒に行く)」

舞流が目を輝かせながら宣言するのに妹の性癖が理解できない臨也は少々引きながら、内心とても上機嫌でした。

(王子なんて城に籠ってばかりでなかなか近付けないし、せっかくのチャンスを無駄にするわけにもいかないよねえ)

悠々自適な人間観察ライフを断念した臨也は、今度は王子や国の重役に取りいって国中をかきまわしてやろうと思ったのです。そして、予想通り舞踏会に集まる女性たちに興味を示した妹の付添いを買って出て舞踏会に向かっているわけです。
ここで静雄がこの話を聞いたとしたら「てめえなに企んでやがる!!!」と本日二度目の戦争勃発となり舞踏会どころじゃなかったのでしょうが、彼は臨也とは正反対にドレス姿の自分を恥じて部屋に閉じこもっていたのです。なので今日舞踏会があることすら知りません。

ただ、一つだけ思いがけなかったことがあったとすれば、今着ているドレスです。臨也は城に向かう途中に適当な服を買えばいいと思っていたのですが、それを聞いた舞流が「こんなこともあろうかと!」と叫びながら正装用の、毒々しいほどの紫のドレスを取り出したのです。もちろん、サイズは臨也ぴったりの。

(・・・・・・うん、まあ、向こうで王子に会う前に適当に借りればいいか、従者あたりからでも)

気絶させて無理矢理に。そんなことを思いながら臨也は馬車の窓から見える城を見上げました。

◇◆◇◆◇

場面変わって平和島の家。

(くそっ、幽が帰ってくるまでの辛抱だ。あいつが服を買ってきてくれれば・・・)

日が暮れても明かりを灯さず暗い部屋で一人自分自身に言い聞かせている静雄。よほど今の姿が耐えられないのでしょう・・・。
あの、そこまでひどくもないですよ? ほら、静雄さんってイケメンですから何着たって似合いますし。今の静雄さん見て狂喜する人もいると思うなあ、狩沢さんとか!!! ・・・・・・失礼しました。

そんな静雄が落ち込む中、家のドアをノックする音が響きました。

(なんだこんな時間に。九瑠璃や舞流のやつは出かけてんのか?)

静雄はやっと家に自分しかいないことに気付きました。しかしこんな姿で人前に出るわけにはいきません。居留守を決め込みます。
ですが来訪者もなかなか諦めが悪くいつまでもドアを叩き続けました。

ドンドン、ドンドン、ドンドンドン、ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン・・・

「うるせえええええっっっ、そんなに叩いてもいねえもんはいねえんだよ!!!」

ついに我慢できず静雄は部屋から駆けて玄関のドアを来訪者も巻き込むつもりで蹴破りました。しかし駆けてくる足音に気付いた来訪者、昔からの静雄と臨也の友人である門田京平はドアを叩くのをやめ、横に退いていたため無傷でした。

「ったく、やっと出てき・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」

言いかけた言葉が止まります、というか出てきません。それほどまでに衝撃的だったのです、静雄のドレス姿は。
・・・・・・うん、そうですね。確かにさっき静雄さんのドレス姿見て狂喜する人はいるって言ったけど、それは狩沢さんみたいな人種であって、さすがに門田さんは・・・。いや、だって、門田さんだし・・・。

自分が女もののドレス着ているところを昔からの友人に見られた静雄と、見せられた門田。なんとも微妙な空気が流れます。
しかしそれに終止符を打ったのは、やはり我らが常識人、門田さんでした。

作品名:これも一つのシズデレラ 作家名:千華