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デュオ

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そしていつしか僕も彼女が出来た。僕が好きになったというより、彼女が僕に告白をしてくれてそれを受け入れた感じだった。彼女は良い子で一緒にいると楽しかった。キスをしたいと僕が思ったのも、本当だ。だけど抱きたいという気持ちを抱くことはなくて、昨日彼女に誘われるまではそういう関係に至ることがなかった。僕はその理由を知らなかったし普通じゃないのかもしれないと思ったけれど、性欲の薄い男も世の中にはいるということを知って、あまり気にしなくなった。だけど昨日のことはまた違った。彼女を抱こうとしたことで、僕は一つの答えを知ってしまった。

僕がぼんやりと思考をめぐらせていると、唇が離れてトランクスくんは僕を見下ろした。

「ほら、また拒まない。」

一言そう呟いた彼の顔はとても悲しそうで、僕は僕とトランクスくんが恋人のような関係だった頃のことを思い出した。彼は時々そういう顔をしながら僕を抱きしめた。全部を諦めているような悲しい顔で、僕は何度も彼の心が読めれば良いのにと思った。結局その理由を知ることさえなく、僕はトランクスくんのそういう顔を見ることがなくなった。だけど今まさにその表情を浮かべているトランクスくんは、明らかに一年前と同じだった。

「なんで別れたりしたんだよ。」

絞り出したような声が聞こえてきて、僕は無意識に聞き返そうとした。トランクスくんはさっきまで僕を殴っていた手で僕の頬を優しく撫でた。手つきは優しくても、まだ若干の痛みが頬を走る。

「悟天はいつも優しすぎる。俺がお前を好きだからって、抱いたりキスしたりするのをいちいち受け入れてたら、彼女も出来ない。お前は何も分かってない。」

トランクスくんは泣きそうだった。ひどく悲しい声で言うから僕まで泣きそうになった。
だけど彼は誤解をしていて、もしもそれを言われたのが一昨日だったら僕にはその意味が分からなかったかもしれない。でも今の僕にはよく分かった答えが一つだけあった。僕の頬に触れていたトランクスくんの手を取って、強く自分の頬に押し当てた。そう、まるで昨日僕の彼女が僕にしたみたいに。

「僕、昨日彼女を抱こうとした。」

僕がそう言うと、頬に当たっている手に力が入るのが分かった。目の前の悲しそうな目は僕を見ていない。

「だけど僕は抱けなかった。だって、僕を誘っている彼女のしぐさを見る度に…笑わないでよ?僕は、トランクスくんに抱かれてる時の自分を思い出してた。」

逸らされた視線が僕のほうを向いた。まだよく分からないようだけど、僕がちょっとだけ笑ったら、トランクスくんの手のひらの力がほんの少し抜けた。

「トランクスくんに抱かれてる時、僕は幸せだった。今までなんでトランクスくんが悲しそうな顔するのか分からなかったけれど、僕が何も言わなかったからだよね。ごめんね。僕もトランクスくんが好き。多分、恋だよね。」

恋、と口に出すと今までの恥ずかしさがいっきに溢れたみたいに体が熱くなった。僕自身が知らずにかけていたリミッターが外れて積が溢れるみたいに。僕はてっきりトランクスくんが泣いて喜んでしまうんじゃないかと思ったけれど、彼は予想に反して眉間に皺を寄せて黙ったまま僕の上から退いた。立ち上がって、昔僕に初めてキスをしたあの日みたいに僕に背中を向けてしまった。僕は頭や体についた草を払いながら上体を起こしてトランクスくんの後姿を見る。あの頃は分からなかった彼の表情が今はよく分かる、それが嬉しくてなんだかにやけてしまった。

「トランクスくーん。」

僕が座ったまま大声で名前を呼ぶと、目の前の人はまだあちらを向いたまま、腕組をして咳払いをした。

「気付くのが遅すぎるんだよ。ったく、バカ悟天。抜けすぎ。天然。後で覚えてろよ。」

ぶつぶつと僕への文句が聞こえてくる。夕陽の落霞紅が煌々と僕らを照らしている。だけど、トランクスくんの耳が後ろから見ても分かるくらいに赤いのはそのせいじゃない。どこか拗ねた子供みたいな背中が愛しくて、すぐに僕はその意味を知る。
作品名:デュオ 作家名:サキ