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Boyfriend

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そして僕はというと、何の前触れも無くトランクスくんを恋しいと想ったりする。それは例えば学校の帰り道だったり、自分の部屋で一人ベッドに寝転んだ瞬間だったり、…今みたいにトランクスくんの家で勉強をしている時だったりする。彼女がいた時に思ったような感情じゃなく、ただ側にいたいと思う。手に触れて、彼が生きているという事実を確かめたい。前してくれたみたいに黙って抱きしめてほしい。

「トランクスくん。」

テーブルを挟んで向こう側で勉強をしているトランクスくんに声をかけても相手の目線はまだ問題集だった。若干の間が空いてから、「ちょっと待て、この問題だけ解くから。」と返ってくる。こういう時は下手に駄々をこねると僕への態度はますますそっけなくなっていく。長年の付き合いで学んだこと。仕方無しに、頬杖をついて我慢した。
季節は秋。陽が暮れて窓の外はすっかり暗くなっている。トランクスくんの家は都会にあるから、僕の家みたいに虫の音は聞こえなかったけれど、窓ガラスに映るネオンが綺麗だった。目の前で流れるように崩れてゆく方程式。流れるようにさらさらと答えを書き込み終えると、その瞳はようやく僕を見た。

「で、どうした?」
「ん…、ちょっとだけ手を貸してくれる?」

シャーペンを置いて、その手を差し出す彼の頭上にはまだ疑問符が浮かんでいる。その表情がおかしかったのと差し出してくれたてのひらが嬉しくて、自然と頬が緩んだ。細めで綺麗な指だけど、僕よりも少しだけ大きいその手を僕は両手でぎゅっと包み込む。温かな指先に安堵を憶えて、その手を引いて近くのソファまで移動させる。そしてそのまま彼の膝の上に転がるように寝そべる。相変わらず僕の真意が読めない、といった様子でいたトランクスくんも少しだけ笑った。

「なんだよ、今日はやけに甘えるな。まるで子供みたいだ。」

笑みを含んだ言い方をしながら、さっきまで僕が繋いでいたその手で僕の頭を撫でた。こうしていると本当に小さな頃、兄ちゃんに甘えていた感覚を思い出す。僕が黙って横を向いていると、それをどう取ったのか、トランクスくんが頬にキスをしてきた。唇が離れる時に、こっち向けよ、と囁かれて僕は上を向いた。トランクスくんは笑ったまま僕にキスをする。その表情が幸せそうで、僕はなんとなく今は何もいらないと思った。そんなことをしていると、トランクスくんの部屋にあるインターホンが鳴って、ブルマさんの声が聞こえてきた。

「ねえ、そろそろ悟天くん帰らなくて平気?」

機械を通して聞こえるブルマさんの声に、僕は反射的に壁にかけてある時計を見た。確かにそろそろ帰らなくてはならない。だけど、今は動きたくなかった。追い討ちをかけるかのように、だってよ、とトランクスくんは尚も僕の髪を撫でて言う。
普通ならここでお別れなのだけれど、僕はそのまま上体を起こしてトランクスくんに抱きついた。僕のそんな様子を見て、彼はまた笑う。何がそんなにおかしいのかは分らないけれど、悲しい顔をされるよりずっと良い。口を閉ざして抱きついていると、トランクスくんはそんな僕の腕を外してインターホンを使ってブルマさんに返事をする。

「母さん、今日は悟天泊まっていくって。」
「あらそう。じゃあちゃんと家に連絡するのよ。私はブラを連れて出かけるけど、夕食は自由にしてね。」

トランクスくんが分かった、と返事をすると、ブルマさんはゆっくりしてってね、と僕に告げて通信を切った。一連の流れに身を委ねていただけの僕はぼんやりとトランクスくんを見た。トランクスくんは僕に歩み寄ってくると、僕の手を引いて立ち上がらせた。そしてそのままベッドまで連れていくとそこに僕を横たわらせる。今度は僕がトランクスくんの考えが読み取れなくて、ただ瞬きをするしかなかった。
トランクスくんは、そんな僕にまた優しく口づけをすると、ベッドの上でぎゅっと抱きしめた。彼の肩からする香りに安心して目を閉じてしまう。

「帰りたくないって顔してただろ。」

嬉しい?と尋ねられて思わず頷く。確かにまだ側にいたいと思ったのは確かで、こうして抱きしめられたいと思ったのも本当だった。耳元でふふ、とトランクスくんが笑うからこそばゆくて体をよじった。同時に「お前ってわかりやすすぎ。」と言われ、今まで僕を抱きしめていた腕が僕の服の下へと滑りこんでくる。

「あ。」
「え?」

僕が声を洩らすと、トランクスくんは不思議そうに僕を見た。その時に腕の動きも止まってしまったから、なんだか止めてほしくなくて、「なんでもない。」と告げる。

(そういう意味じゃないんだけど。)

再度僕の素肌の上をなぞる指先。心の中では静かに目の前の恋人のしようとしている行動を否定した。だけど敢えて無口になったのは、それでも構わないと思ってしまった自分を見つけたから。こんな成り行きだらけの僕の想いと、いつでもまっすぐなトランクスくんの心で、僕と彼のこの先も続いていくんだろう。薄暗い部屋で、なんとなく、そんなことを思った。
作品名:Boyfriend 作家名:サキ