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レイニー

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情事の後に荒い息と伴に二人が達し、急に辺りが静かになる。深夜の静けさに、風に吹かれて壊れたドアの揺れる音だけが聞こえた。ふとトランクスは目の前の人物が泣いていることに気がつく。痛かったか?と心配して訊ねてみるが、悟天は黙って首を振った。どうして泣いているのか分からない。と、子供のように口を開く。その間も涙は止め処なく零れ落ちて、両手のひらで拭うばかりでは到底抑え切れなかった。

「可笑しいよね、トランクスくんと一緒にいられて、幸せなはずなのに、どうして僕は泣いているのかな。」

好き、トランクスくんが好きだよ。
悟天は壊れてしまった再生機のように同じ言葉を繰り返す。トランクスは、自身の名前を呼びながら涙を流している悟天の心情が分かるような気がしていた。
二人は家族を捨てた。学校の友人も、穏やかな毎日を捨てて、二人で放浪していた。お互いを想いすぎるあまり日常に支障が出てしまい、二人の関係が身内に公になってしまった。お互いの母親はやはり相当なショックを受けたのは勿論、もしかしたらこのままでは二人は一緒に居られないかもしれないと危惧しての行動だった。もう少し時間が経てば皆納得してくれるかもしれないとも思った。けれどそれ以上に、引き離されてしまうのが怖かった。まだまだ幼かったのだ。二人で家を離れてひたすら遠くへ逃げた。食料や水を調達する以外は、出来るだけ廃墟や人の居ない荒野を辿った。
それでも本当は気付いている。あの人々が自分たちを見つけて連れ戻すのなど容易いことで、今こうしていられるのはあちらが動きを見せないでいるからだということを。本気で捜索するつもりになればいつでも連れ戻されるだろう。それでも今こうしているのは、あちらが諦めてしまったのか、それとも。そればかりは検討がつかなかったが、今の二人に出来る事は逃走しかなかった。

「ねえ、どうしたらこのまま一緒にいられるのかな。」

もうすぐ家を飛び出して一週間になる。そろそろ潮時であることはなんとなく悟天も気付いていた。そしてこの夜が始まった頃から次第に強くなりはじめていた遠方の懐かしい気の動きにも。

「トランクスくん…。」

泉のように悟天の涙が落ちるのを見ていたトランクスは、その手をそっと悟天の首に宛がう。何をしているんだ?そんな声がトランクスの脳内で反響する。止めろ。止めるんだ。しかし声に逆らって手のひらには次第に力が入り始める。夜明が来てしまえばきっと家族が自分たちを連れ戻しに来る。そうなる前に。緩やかに首を絞められた悟天は、ゆっくりと目を閉じた。もしも他人同士ならば何気ないしぐさとしか受け止めないのかもしれない。けれどトランクスは、それが了解の合図だと気付いてしまった。目の前の悟天の顔を焼き付けるようにじっと見つめた後、トランクスも目を閉じる。
閉じたまぶたの内側が熱くなってくる。風に揺れる木片の音。近づいてくる気配。夜明が来る前の匂い。二つの窪みから零れ落ちた水滴がなだらかな頬を通り過ぎて地面に到達する頃には、目に映るものも消える。すぐに全てが消えて無くなる。今ここに或るのは、静寂に包まれた廃墟の空気と、永遠に届かない二つの距離だけだった。
作品名:レイニー 作家名:サキ