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無人島に持っていきたいもの

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「こっちっ側がこんなふうになってるなんてなァ。あー勿体ねェ、二年前にきっちり両目で見ときゃ良かったぜ」
 言うなり、髪に差し入れられた手がするりと項に回される。そのままの動きで、ゾロはサンジの頭をぐっと引き寄せた。
 顔が近ェと突っ込んでやる間もなく、唇が塞がれる。
 触れ合った唇の感触に、目を見開いた。
 ゾロと寝た事は何度もあったけれど、こんな触れ合い方をしたのは初めての事だった。キスなど、ただの性欲処理に過ぎないあんな行為には不必要だったからだ。それなのに。
 彼の性格そのままの傲慢なキスだった。特別上手いわけでも丁寧なわけでもない、なんともゾロらしいキスだ。閉じたままの歯列をぐいと乱暴な舌に割られ、口内を探られる。ゾロの舌は厚く、何かを探るような動きで好き勝手にサンジの口内を這い回った。
 なんで、こんな事を。
 抵抗する事も忘れ、サンジはただ呆気に取られたようにそればかりを考えた。ゾロとキスをしているという自分の今の状況が、あまりにも有り得なかったからかもしれない。ある意味、初めてセックスをした時よりも現実感がないくらいだった。
 くちゅ、とやけに水っぽい音をたてて唇が離される。
 目を見開いたまま呆然としているサンジの顔を覗き込み、ゾロはくしゃっと顔を顰めて笑った。子供みたいな顔だ。その表情のせいだろうか、片目を塞ぐ引き攣れた傷跡が更に痛々しいものとして目に映る。

「─────お前、その目の傷どうしたんだよ」

 ふざけんなテメェ、気色悪ィ事しやがって。
 そう罵ってやろうと開いた口から、自分の意志とは全く異なるそんな言葉がぽろりと溢れ出て来て驚いた。しかも何だか妙に力ない声でだ。
 こんな事、聞くつもりなど無かった。気になっていなかったと言えば勿論嘘になるが、ゾロの方から切り出して来ない限りはこっちから聞き出したりしないつもりでいたのに。
 だが一度口にしてしまったその台詞を訂正する気にもなれず、目の前の男の顔をじっと見つめていると、ゾロは面白そうに笑いながらサンジの濡れた唇を指先で軽く拭った。

「知りたきゃ教えてやるよ。────ただし、上に上がってからな」