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シスターコンプレックス

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「俺はあんたが死ぬほど嫌いだ」
「奇遇だな、ガキんちょ。俺もお前が大っ嫌いだよ」















帝人は友人の一人である園原杏里と授業の合間の短い休み時間をお喋りに費やしていた。
とまあ、ここまではごく普通の女子高校生なのだが。あいにく折原帝人の取り巻く環境は普通とはかけ離れたもので、



「おおおおおおおおおおおお折原帝人はいるかああああああ!!??」



今日も今日とてどこかの教師にフルネームで叫ばれるのであった。




「はいはい、折原帝人はここですよー」
「すすすすすまんが奴らを止めてくれ!!」
「①臨也さんvs静雄さん②正臣vs臨也さん③後輩vs正臣。どっちですか?」
「②!!」
「・・・・どうりで顔見せないと思った」
「大方、竜ヶ峰さんのところに遊びに来た二人が運悪く鉢合わせたというところでしょうか」
「どっちも自重すればいいのに」
そう言いながらも腰を上げる帝人に、杏里も同じように席を立ちながら苦笑した。
「仕方ないですよ。二人とも帝人さんのことが大好きなんですから」
「・・・・・嬉しいけど、複雑だねそれ」
「どうでもいいから早く止めてきてくれーーーー!!」










臨也にとって、姉である帝人は大事で大切で愛してやまない一人の女性だ。そこには家族愛のような慈しみもあれば、欲に塗れた穢れた愛も存在する。姉を大切にしたいと思うのは本当で、姉に近づく人間は一人残らず消したくなるのもまた事実ということだ。それでも、弟が抱くには過ぎた独占欲を姉は許容してくれる。だからこそ臨也は姉を愛することができる。きっと拒絶されたら、臨也はここに居ない。生きることすらできなくなる。それぐらい、臨也にとって姉はすべてなのだ。(愛してよ)(愛してるんだ)


(なのに、)


目の前の男を射殺さんとばかりに紅い眸で睨みつける。臨也の天敵と同じ色に髪を染めた一つ上の先輩(敬ってもいないが)である男を臨也は心底嫌悪していた。それこそ天敵以上に。
何の繋がりも無いくせに姉の傍に当たり前のように佇む姿に殺意と嫌悪を覚える。そこはお前の場所じゃない。昔から、そして今もこれからもずっと、姉さんの隣は俺の、俺だけのものなのに。どうしてお前がそこにいるんだ!


「いい加減、姉離れしたらどうだ?お前がそんなんじゃ帝人が可哀相だろう」
「・・・うっさいなぁ、紀田正臣。あんたの汚い口から俺の姉さんの名前が出るだけでも虫唾が走るから止めてくれない?てか口縫ってそんで窒息して死んで地獄に堕ちろ」
「(・・・この野郎)・・・・俺が死んだら帝人は悲しむだろうなぁ。ただの弟のお前と違って、俺と帝人は男女の垣根を越えた信頼関係&友情ぷらすの気安さそんでもって硬い絆で結ばれてるしな!」



「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」



臨也はナイフを手にする。
正臣は硬く握った拳を手のひらに打ち付けた。




「俺はあんたが死ぬほど嫌いだ」
「奇遇だな、ガキんちょ。俺もお前が大っ嫌いだよ」




今日最初の戦争が2年校舎の廊下で勃発した。









「そしてこの惨状・・・・」
帝人は腕を組みながら、ボロッボロな廊下と同じくボロッボロな二人(もちろん正座させている)を交互に見た。壁にはナイフが突き刺さってたり無残に壊れた椅子が散乱している。誰のかは知らないがご愁傷様だ。
(でもこれが静雄さんvs臨也さんだったら、壁に穴開いてたかもしんないし・・・。この二人で良かった・・・のか?)
「とりあえず、これを機に自重の意味を辞書で調べて作文用紙に百回書いたやつを先生にでも提出しようか、二人とも」
「「だって、こいつがっ!」」
「男の、言い訳、見苦しい」
きっぱり三分割で言いきった帝人は、後方で待機している教師に「もう大丈夫です」と声を掛ける。あからさまにほっとする教師の頭部を眺めながら、帝人は今度あの教師に胃薬か増毛剤を贈ろうかなと思った。善意が時として心の傷を抉るのを帝人は知らない。
「とにかく、二人のせいで僕と杏里さんもサボる羽目になったんだから、その点考慮してもらって、・・・・正臣」
「今日のお昼奢らせてもらいます!」
「二人分ね。・・・・臨也さんは」
見上げてくる紅い眸に、帝人は苦笑する。そこに隠された感情を、姉として見過ごせなかった。
「・・・これからお説教しましょうか。傷の手当てもしないといけませんし」
「何!?ずっこいぞ!俺だって帝人に愛のお説教されたい!」
「あははやだなぁ正臣ってば。そう言うなら思う存分やられるといいよ、・・・・園原さんに」
「任せてください」
きらりと光る眼鏡。愛らしい手には日本刀が握られてた。
銃刀法違反って何それ?おいしいの?
「ちょ!説教だけだよな!やられるって殺るって意味じゃないよな!?」
「・・・・・・・・・・もちろんですよ」
「沈黙が怖いお!!」
「園原さんよろしくね」
「はい。竜ヶ峰さんも早く戻ってきてくださいね」
杏里の言葉に、今まで黙りこくっていた臨也の肩がぴくりと動く。ぎらりと睨みつけられても、杏里は穏やかに笑うだけだ。とりあえず帝人は弟の頭を叩いて、正臣を引きずっていく杏里を見送った。
「いーざーやーさーん。駄目じゃないですか、正臣ならともかく園原さんを睨むなんて」
「・・・・・だってあの女、牽制した。むかつく」
「だからって・・・・ああもういいです、話は歩きながらでもできますから、とりあえず立ってください」
渋々立ち上がる姿は拗ねた子供だ。帝人は見慣れているが、正臣がまだ居たら大げさに「きもい!」と叫んでいただろう。さっさと退場させて良かった。不貞腐れてそっぽを向いている横顔に嘆息して、ふと帝人は弟に左手を差し伸べた。それを見た紅い眸がぱちりと瞬く。幼い表情に帝人は笑みがこみ上げながらも、「行きますよ」と手のひらをひらひらと振る。
「保健室までですからね」
そう言えば、臨也にしては珍しく漸く意図が飲み込めたのか、慌てて帝人の手を右手で掴み、繋ぎ合わせた。(逃げないのに)帝人が苦笑すると、臨也は目元を紅くして、視線を逸らした。
「姉さんって、ほんとずるいよね」
「お姉ちゃんですから」
「・・・何それ、意味わかんない」
そう言いながらも、笑みが混じる声に帝人も笑った。
作品名:シスターコンプレックス 作家名:いの